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その42


「玄ちゃんおはよ!」

「なんだ美子か、おはよう」

「え! な、なんだ!? …… 言われてみればなんだ私ですけどー!」



速水にフラれて次の日、美子の気持ちは速水から聞いたが生憎まだ立ち直れてない俺の冷めた挨拶になんなの? という感じで肩をグイグイ揺らされる。



「よお玄、おはようって朝から激しいな」

「あ、矢吹君おはよう。 聞いてよ、玄ちゃんに挨拶したら「なんだ美子か」だってー!」

「それはないだろー玄、こんなに可愛い子に挨拶されて」

「あはは、ありがと。 …… ねぇ玄ちゃん今日は一緒に帰ろ?」

「え? ああ」



美子の言葉を流すように俺は席に着いた。



「お前心ここにあらずじゃね?」

「え? そうか?」



そう、英二が言う通り俺は昨日の速水の事で頭がいっぱいだった。 まさか高校生活が始まったばかりでこんな絶望的な気分を味わうとは……



告白なんてしなきゃよかった、それに俺は今日速水の居るクラスに行けるのか?



「なあ英二」

「なんだよ?」

「お前好きな子に告白してフラれたらどうする?」

「そうだなぁ…… ってお前誰か好きな子でも居るのか? 七瀬? もしかして宮野か?」

「いやなんとなくだよ」

「なぁんだ。 まぁ落ち込むわな、けど告白自体した事ねぇからわかんねぇよ」



まぁそうだよなぁ。 俺は勢いで告白してしまったのをまた後悔した。 後悔したと同時に昨日の事が鮮明に思い出されていく。



「とにかくウチを好きだっていうのは忘れて。 聞かなかった事にするから…… ごめんね」



何がごめんねだよ! 俺は今日速水の居るクラスに行き辛くなっちまったじゃねぇか…… 俺の高校生活アボンだ。



「…… 君、玄君?」



そんな事を考えていると遥が来ていた。 



「玄君おはよう」

「ああ、おはよう」

「?? 玄君大丈夫? 何かあった?」

「そうだよな宮野、こいつさっきからずっとボーッとしてやがんだ」

「玄君……」



遥が心配そうな顔をしていたので俺は目を逸らした。 はぁー、いつまでもしょぼくれてても仕方ないし元気出すか、出ればだけど。



一限目の授業が終わり次は体育の時間になった。 なのでジャージに着替え英二と一緒に体育館へ行った。



「入学式でも思ったけど中学の体育館より全然広いなぁー」

「お! 玄見ろよ、女子が来たぞ」



今日の体育は男子がバスケ、女子がバドミントンだ。 しかもタイミングが悪い事に速水のクラスも合同で……



「お前らもう来てたのか」



肩を叩かれたので振り返ると亮介と明も来たようだ。 



「なんかお前と居ると中学ん時とあんま変わんねぇ気がするな、七瀬トリオも揃ってるし」

「確かに……」



亮介のクラスの女子達も来て授業が始まる。 俺のチームの試合まで少し時間があるので初対面というか普段あまり話さない男子とも話す機会だと思うと向こうから話し掛けられる。



「由比ヶ浜、見てて思ったんだけどお前って七瀬と遥とすげぇ仲良いよな? どっちかと付き合ってるのか?」

「俺もそれ思ったわ、同中なんだろ? お前の学校羨ましいな」

「付き合ってねぇよ、美子は元々ああいう奴だし遥はまぁあまり友達居る方じゃなかったから俺に慣れてるだけかもな」



付き合ってるのか? と聞かれればなんとなくそんな風に答えてしまう。



「ん? けど早速来たぜ七瀬が」

「え?」



見ると七瀬も自分の出番までまだ時間があるのか俺の方に走って来た。



「やっほー玄ちゃん、まだ私の番じゃないから来ちゃった」

「来ちゃったってあっちで他の女子と話してれば?」

「むぅー! 朝から玄ちゃんつれないなぁ、ちゃんと玄ちゃんのとこ行ってくるねって言ってきたもん」

「相変わらず仲良しで羨ましいぜ、付き合っちゃえば?」



そんな声が聞こえる中、女子の方を見てみると一際高い身長が…… 速水だった、こちらを見ている。 



「だってー玄ちゃん、えへへ」

「よせよ」



速水の見ている前でそんな感じを見せるのがなんだか嫌だったので冷たい感じにあしらってしまった。



「玄ちゃんまだ機嫌悪い?」



美子が俺の顔を覗き込んできたのでさっと背中を見せた。



「んなわけないだろ」

「そんなわけあるよー? 笑顔笑顔!」



両手の人差し指を口元に持っていき美子は笑顔を作って見せた。



「あ…… 琴音こっち見てる、おーい!」



美子がこっちを見ている速水に手を振ると速水はニコッと笑って手を振った。 バカにしてんのかあいつ? と思ってしまうのは昨日の事があったからだろうか?



「玄ちゃん琴音のこと見てどうしてもっと不機嫌そうな顔してるの?」

「え? そんな顔してるか?」

「してるよ、何かあった?」

「なんにも」

「ブー!」

「うわッ」



鼻に人差し指で押されて美子は頬を膨らませた。



「ダメだよ玄ちゃん! 私のお弁当のおかず分けてあげるから機嫌直そ?」



俺はお前の弟じゃないんだぞ……





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