その41
「ちょ、ちょっと! どさくさに紛れて何ウチに告ってるのよ!?」
速水が掴んでいた俺の腕をパッと離した。
「どさくさじゃない! 速水がそう言うからだろ! 俺はずっとお前の事が好きだったんだ、なのにそんなお前から美子か遥どっちかと付き合えなんて言われるから……」
ああ、もうめちゃくちゃだ。 こんな告白の仕方ってあるか?
「バカじゃないの!? ウチがあんたを好きになる要素なんてある?」
「ない!!」
「は??」
それは俺も思っていた事なのできっぱりと言ったら速水はポカンとした顔をしていた。
もし速水に告ったらこうなる事くらいわかってた。 「大丈夫……」、さっき遥に言われていた事が頭にこだましていた。
「確かに速水が俺を好きになる要素なんてなかった、けどこれからがあるだろ?! それに…… この前速水と一緒に」
「ストップ!! それは忘れてって言ったよね!?」
「誰にも言うつもりはないよ、けど忘れるなんて出来るかよ! 確かに俺は速水の好みじゃないけどそれでも俺はッ」
「おーい、お兄さんお嬢さん、近所迷惑だから夫婦喧嘩は他所でやってくれないかい?」
「「へ?」」
上から声が聴こえたので俺と速水は顔を上げると俺の後ろ側にあった家の二階の窓からおじいさんが俺達を見下ろしていた。
「「すいません!(ごめんなさい!)」」
俺と速水は急いでそこから離れたところへ走って行った。
近くにある川沿いの橋の下まで走ったところで速水は止まった。
「最悪…… あんなとこ見られるなんて」
「どっかのじいさんだからまだいいだろ」
「いやそんな事じゃない! だからなんでウチに告白するわけ?!」
「だから言ったろ! 好きだったんだよお前の事!!」
「ふん! それはそれはどうもありがとう、でもウチはあんたの事なんて好きじゃないの。 あの時は気の迷いなんだから本気にしないで。 それでその気にさせちゃったんなら謝るけどあんたはしっかり自分の状況でも再認識してみたら。 美子は? 遥はどうすんのよ?」
速水はバッサリと俺の想いを断ち切った。 これって失恋? 俺はよくわかんない状況で告白してしまってよくわかんない状況でフラれてしまったってのか?
「美子と遥は凄く可愛いし凄くいい奴だとは思うけど……」
「あんたあんなに見え見えに迫られてんのよ!? それに少しは応えたらどうなの!」
「そ、それを言うなら俺だって速水にッ!」
と、その時速水に電話が掛かってきて手で制された。
「誰よまったく…… って葎花からだ」
速水は溜め息を吐いて電話に出る。
「はい、何? どうかした?」
速水は電話に「うん、うん……」と頷いている。
「え? 由比ヶ浜? 居ないけど…… ああ、美子が? はいはい」
俺の事まで出てきた。 まぁ会話から察するに美子も一緒なんだろう。 少し待つと電話は終わったようだ。 速水はまた溜め息を吐いてこちらを見た。
「今の電話……」
「うん、美子があんたを心配してるって。 ていうかウチがあんたと会ってるんじゃないかって疑ってるかも。 葎花にお願いして掛けたのかも」
「いやいやいや、俺が速水と?! うんまぁその通りだけど」
「わかったでしょ? ウチはあんたの事は好きじゃないけど美子や遥はあんたが好きなの、それに美子はああ見えて依存するし甘えたがりなのよ」
おいおい、なんか雰囲気が締めみたいになってきたぞ……
「じゃあ俺のこの気持ちはどうしろってんだよ?」
「知らないわよ、もう高校生でしょ、自分で気持ちの整理くらいしなさいよ。 ウチはあんたの友達…… だったわね。 仕方ない、美子と遥どっちと付き合うかは知らないけどそれならウチはあんたに協力してあげるから」
今こうして張り裂けそうな気持ちで改めてわかる、俺の初恋は速水だった。 それをどさくさとはいえ告白したのに本人からこう言われ自分の気持ちに整理をつけろだって?
俺はそれほど物分かりがよくないしこれも改めてわかった、俺はガキだ。 簡単に気持ちの整理なんて出来そうにない。
すまん遥、お前が優しいし頼りになるなんて言った奴はこんなヘタレ野郎だったわ。
「ちょっと! どこ行くのよ!?」
「帰る…… なんか疲れたわ」
「はぁ!? 何言ってんのよこのヘタレ!」
ズーン…… 初恋の相手にヘタレ呼ばわりは心に来る、が実際ヘタレ野郎だ。
「クリスマスの時だって美子はあんたと祝いたいから美子はわざわざ周りくどい事してウチらと別々に祝ったのよ!」
「…… じゃあなんで遥も一緒だったんだ?」
「そりゃあ美子はあんたの事が好きだから同じくあんたに気があるかもしれないって思った遥の気持ちを確かめるためもあったんでしょうよ、それに美子も遥ともっと仲良くなりたいって気持ちもあったでしょうし。 あんたの事は好きだけど自分に懐いてくれた遥の事も好きなのよ」
「よくわかんないけどわかった」
「話聞いてる!? ますます見損なってきたわ! そんなんでウチを振り向かそうなんて思ってたら美子と遥にも失礼なんだからね!」
その後俺はいつの間にか家に帰っていた、よく覚えていないが呆然自失していた。




