その32
「ああ、そう……」
「………… うぐッ…… す、好きか嫌いかの2択の意味だからね!!」
「いや、それはご存知です。 なんでお前が慌ててるの?」
「あわあわあわ、慌ててないよ!」
その割にはあわあわ言ってるじゃねぇか、別にこんなお遊びみたいな感じで好きと言われて動じる俺ではないわ。 脚はガクガク笑っているが、いかんいかん流れを変えなくては……
「そういえば勉強は?」
「あ、そうだった。 お勉強って言ってたもんね。 …………」
「ん? なんだ?」
なんだか美子はゴニョゴニョ言っていたが聞き取れなかったので聞いてみた。
「な、なんでもない! お勉強しよ」
美子が参考書を棚から出すと俺も美子と頭の出来が似たような物なので2人揃って問題を解いていくが……
「玄ちゃん?」
「うん? な、なんだ?」
寝落ちしそうになってしまった。 文字を見ていたら睡魔に襲われそうになる。
「玄玄坊っちゃま♪ 玄玄坊っちゃま〜♬」
「何それ?」
「子守唄!」
つーか玄坊っちゃまってなんだよ?
「やっぱり玄ちゃん眠そうだなって。 いいよ、ベッドで少し寝なよ?」
「お前の変な子守唄のせいで少し目が覚めた」
「え〜、変じゃないよぉ。 玄ちゃんが落ち着けるように歌ったんだけど」
落ち着く…… 落ち着くか。 なんか遥も落ち着く人になるとか言ってたな。
「どうかした?」
「落ち着く人ってどんな人?」
「ん〜、例えばお父さんお母さん? 家族みたいな。 それがどうかしたの?」
「例えば美子って俺と居ると落ち着く?」
「あははッ、どうだろ? 私的には玄ちゃんと居ると楽しいよ。 玄ちゃんは?」
「お前何言うか何し出すかもわかんないから意味不明」
「あーん酷いなぁ。 これでも一生懸命なのに」
「…………」
あ、ダメだ。 会話続かない、眠くてどうでも良くなってきた。
「少し寝なよ。 今日は学校早く終わったんだしちょっと遅いけどお昼寝してて。 私もやる事出来たしさ!」
「やる事?」
「内緒! 寝て待ってて? 私のベッドなら遠慮なく使っていいからさ」
そう言って美子は出て行った。
明らかにやる事って今思い付いたよな? まぁいいや、美子が居るとベッドに入り辛かったし遠慮しないで美子のベッドを使わせてもらおうかな?
姉貴のベッドで寝た事はあるからこれも姉貴のベッドだと思えば大丈夫だ。
制服の上着を脱いで布団をめくり横になると枕元から美子の匂いが…… 当たり前か。 ないとは思うけどヨダレとか垂らさないようにしないとな。
寝てないだけにあっという間に寝れた。 美子に起こされるまで全然起きずに。
「おはよう玄ちゃん」
「おはよう…… なんで美子が居るんだ?」
「寝呆けてる〜! ナオちゃんみたい、あははッ。 玄ちゃんここは私のお部屋だよ」
「あ! そうだった、俺ってどれくらい寝てたんだ!?」
「1時間くらいだよ、よく寝れた?」
時計を見ると3時半過ぎ、まだこんな時間だったか、良かった。 美子のお父さんが帰ってくる前に帰らないと面倒そうだからな。
「よく寝たしそろそろ帰って寝ようかな」
「わッ、ダメだよまだ居て? 玄ちゃんに3時のおやつも作ったんだから!」
「え? そうなの?」
「ちゃちゃっと作ったから少し冷めちゃってるかもしれないけど玄ちゃん気持ち良さそうに寝てたから」
「…… ん? じゃあ出来たあと何してたんだ?」
「な、なんにもしてないよー(棒読み)」
怪しい…… 周囲を見渡すと特に変わった事はないようだけど。
「な、何したんだ!?」
「あ、ええと…… 制服脱いであったからそこに掛けといた。 それと、ね、寝顔をこっそり」
美子は携帯の画面を見せると俺の無防備な寝顔が……
や、やられた! こんな恥ずかしい写メを撮られるとは迂闊にも程があるだろう俺!
「だ、大丈夫! ナオちゃんの寝顔もあるから、ほら!」
何が大丈夫なんだ? 直也の寝顔もあるが俺の寝顔が最新になってるじゃねぇか、全然大丈夫じゃない。
「消せ!」
「いや!」
美子は腕を後ろに回して隠した。 だが俺も回り込んで美子から携帯を奪った、奪ったはいいが暗証番号がわからない。
「………… 暗証番号は?」
「プライバシー侵害!」
美子のくせにこういう時は正論言いやがって……
「それなら私の寝顔でも撮れば? それでおあいこ!」
「…… それって何がおあいこなんだ? お前今から寝れるのか?」
すると美子はテーブルに顔を伏せて横顔を見せた。
「はいどうぞ撮ってください」
「お前意識あるから顔キメキメじゃねぇか!」
「でも目を瞑ってるから寝顔じゃないかな? さあどうぞ?」
…… 負けた気がする、何故か知らんが。
「くそ! じゃあ撮ってやる、後悔すんなよ!?」
「はぁーい、さぁどうぞ!」
こうなるともう意味はないがパシャリと美子の狸寝入りを撮った。
「はい、これで文句なしの後腐れなしだね!」
「はぁ……」
「あ! こんな事してる場合じゃない、おやつ食べよ?」
美子と一緒にリビングに行くと美子の母さんは居なくなっていた。




