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その31


「なんか皆用事があるみたいだねぇ」

「そりゃなんの事前通告なしでいきなり遊ぼうなんて言えばな」

「でも玄ちゃんはのってくれたんだね!」

「いや実は俺も今日は……」



寝たい。 冬休みが終わるのが嫌で夜通しゲーム三昧でほとんど寝てないし。



「え…… ダメ?」



そ、そんなあからさまにションボリされると…… 俺以外全滅でガッカリしてんのはわかるけどさ。



「少し…… ならいいか」

「流石玄ちゃん!」



流石玄ちゃん暇人! って事か?



「あ、七瀬じゃん! ……と由比ヶ浜か」

「原田か、そういやお前もこっちだったよな」



原田はらだ 朋樹ともき、こいつは小学生の頃からモテてた奴で中学入るなり先輩と噂があったり誰かと付き合ってるなどよく噂されるプレイボーイ。



そして俺と美子との声のトーンの差…… まぁ男同士でなんて嫌だが。



「そういう事。 なんか最近七瀬と由比ヶ浜が仲良いって聞いたけどほんとだな! 七瀬といつ友達になったんだ?」

「あー最近ってだけに結構最近かもな」

「ふーん。 七瀬ってそういや付き合ってる奴とか居る?」



俺との話題はそうそうに切り上げやがった。 なるほど、こいつの目的は俺を空気にして美子と話そうって魂胆だな?



「んー彼氏? いないよ」

「でもこの前澤田に告られてなかったか?」

「ああ、うん。 でも私ってお子様だからそういうのよくわかんなくて」

「そうかぁ…… わからないならお試しで俺と付き合ってみないか?」



こ、こいつ〜ッ!! 俺が横に居るのにいきなりとんでもねぇ事言ってきやがった…… いや、自然にサラッと恥ずかしげもなく言えるからいいのか?



そして美子は告られてしまったわけだが一体どうするつもりなんだ? 美子を見てみれば…… 石化してる!!



そんなにショック…… いや恥ずかしかったのか?



「お、おーい七瀬?」

「ハッ!! ごめんなさい! こんなので動揺しちゃう私ってダメな奴なんです」

「そんな事ないって。 逆にそういうところも可愛いよ」



原田も喰らい付く、引く気配はないようだ。 そして美子の変なリアクションにもフォローを入れてる辺り流石だ。



「ほら、難しく考えなくてもお互い合わないなって思ったら離れる。 簡単だろ?」

「そ、そうなんだ……」



大変だなぁ美子も。 なんて思いながら見ていると美子が俺に助けを求めるような視線を送ってきた。



うーん、人の恋路を邪魔するのは気が引けるというかこの状況で俺に何が出来る?



「ん? ああ、そっか。 由比ヶ浜居ると気が散っちゃうか」

「え?」

「由比ヶ浜も気を利かせてくれよなぁまったく」

「…… 悪かったな気が利かなくて。 それじゃあ後は2人でよろしく!」



面倒なのでそっこーで距離を引き離してやろうとダッシュで駆け抜ける。



「ええ!? げ、玄ちゃん待って!」

「は?! 七瀬こそ待てって」

「ごめんなさい! 玄ちゃんのが先客なの!」



先客も何も俺しか居ない時点でさほど遊ぶ事もないだろうに。 



後ろを振り返ると美子の姿は見えない、結構引き離せたか、やっぱ今日は帰って寝ようと思った時だった。



塀の角から美子が勢いよく出て来て俺の両肩を掴んで出て来た塀に引っ張られ背中を強めに壁に押し付けられた。



「捕まえたッ」

「ええッ!? なんで?」



見えなくなるまで引き離したと思ったのに。 こいつこんな脚速かったのか?



「近道……」

「ん??」

「近道見つけたんだ。 ナオちゃんもよく私と追いかけっこしたりしてるから」

「ああ、なるほど……」

「それにしたっていきなり合図なしに走り出すなんて酷いよぉ〜、まぁ玄ちゃんの機転のお陰で助かった事は助かったけど」



機転も何も本気で逃げようとしたんだが? てか近い…… それに女子に壁際に追い込まれるとは。



走ったので2人とも息が乱れている、美子の息が俺の首筋に当たる。



「なんとも思ってないからね?」

「何が?」

「…… さっきの原田君の事」

「いやそりゃわかるよ。 美子少し困ってたようだし」

「うん、だって玄ちゃん居たし」

「ああ、俺も焦った」

「ほ、ほんと!?」

「俺邪魔だったろ? それにああいうのって2人きりとかそういう感じの場所とかでするものかと思ってたからさ」

「…………」



そう言うと美子のほっぺがプクーッと膨れた。 



「玄ちゃん…… 今2人きりだしそんな感じの場所だよ?」

「は?」



俺の肩を掴む力が強くなり制服に食い込む。



「私ね……」

「おーい! 七瀬!!」

「あいつまだ…… っておい!」



美子は俺の手を引いてその場から離れしばらく走った。 



「いやここって……」

「見つからないようにって思ったら家に着いちゃった。 ええと、上がってく?」



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