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30/95

その30


「玄君久し振り…… あ! 新年明けましておめでとうございます」

「あ、ああ、おめでとう」



今頃か? と思ったが遥は美子にずっと付き纏われてたからさっきは言えなかったんだな。 今は速水と美子は教室から出て行ったし。


「…… もうすぐ受験だね。 も、もうバッチリかな?」

「あー、とんでもないヘマでもしない限りは大丈夫だとは思うけど」

「そっか」



遥は愛想笑いのまま俺の目の前で硬直した。 特に話す事がないなら無理して話そうとしなくてもいいのに。



「遥は…… ってお前は頭良いからな、全然余裕か」

「そ、そんな事ないッ! 私緊張すると解答欄一個ズレて書いちゃうかもしれないし」



ええ…… それって頭良いとかそういう次元じゃないよな?



「それはそれは……」

「ごめんこんなんだと困るよね? だから…… わ、私落ち着く人になりたい!」

「落ち着く人?」

「あーそれはね、アタシが解説してあげましょう。 落ち着く人というのはー、うわっとっと!」



木村が解説しようとすると遥は慌てて木村を教室の端まで連れて行って口を塞いだ。



「むぐぐッ、わかったわかったってば遥」



木村がそう言うと遥はハッとして手を離してごめんなさいと謝った、その光景を見てた他の女子が遥に話し掛けた。



「なんか今日の遥アクティブじゃーん。 いつも机でちょこんとしてるのに」

「ねー、琴音のグループに入ったから?」

「ええと…… 私そんなつもりじゃ」



そう冷やかされると木村は遥と肩を組んだ。



「そうだよ、遥可愛い顔してるのに日の目を見ないのは可哀想だからさー」

「へ?」



ポケットから木村はカチューシャを取り出して遥の野暮ったい前髪をかき上げた。



「あわわわッ!」

「ほら可愛い」



真っ赤になった遥は手で顔を隠すが男子達の目にも留まる。



「お、宮野って意外とイケるじゃん」

「たまにそうなんじゃないかって俺も思ってたけど」

「そっちの方がいいじゃん」



などと注目されて宮野を冷やかしていた女子は舌打ちした。



「ど、どどどどうしよう?」

「ほっときなよ、カリカリしてるからあの日なんでしょ」

「そ、そんなぁ」

「ねぇー、それよりどうせ中学最後なんだしさ、爪痕残してこーよ、ちなみにそれ取ったらダメね」

「え? ええ!?」



そう聞いて下を向いて遥はこっちへ走ってきて俯きながら喋る。



「玄君…… こ、これ」



何故わざわざ俺に聞く? と思ったが遥の後ろから熱視線を送る木村がこちらにウインクしている。



「いや、悪くないと思うよ遥」

「玄君…… この方がいい?」



そこは遥の意思次第でと思ったが遥の後ろに居た木村はノートに何やら書いて俺に読み上げろと言いたげにノートを見せる。



「…… ?? 木村も言ってたろ、俺達卒業間近なんだし爪痕残してこーぜ」

「わ…… かった」

「わあ! 遥ちゃん可愛い!」



俺の後ろから突然美子が来て遥に抱きついた。 戻ってきたのかと思うとちょんちょんと背中を突かれた。



「げ……」

「げ…… とは何よ? 失礼ね」



知ってはいけない事を知ってしまったから速水は俺にツンしか表現しなくなってしまったのか…… まぁあの時以外はこいつは常にツン状態だった気がしないでもないが一応はまともに話してくれた事もあった事を考えると悲しい。



「…… さっきはあんな態度してごめん」

「え?」



周りに聴こえないようにとても小さい声で速水は俺にそう言った。



「だからごめんって」



と思いきやせっかく謝ったのに聴こえてなかったの? という感じでまた睨んできた。



「ああ! わかった、わかったよ」

「ちゃんと謝ったからね?」

「琴音ーッ!」

「わッ! 痛ッ」



タックルする勢いで美子は速水に抱きついた。 



………… まさかさっき美子が怒ったように見えたのは速水と俺が何か気不味い雰囲気を察して仲直りさせようとしての事か?



ついさっきまで速水と美子がどっか行ってたのもそれで?



いやいや、だったらなんで気不味くなったか知っちゃった…… わけはないな。 速水だって言いたくないだろうし上手く誤魔化したんだろうけど。




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