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その28


ショウゴが速水の喧嘩があった日の下校の時間、俺は亮介と昇降口に向かっていた。



「さっきの喧嘩凄かったな!」

「ああ」

「お前なんでさっき先生に告げ口したんだ? もしかして速水の事〜」

「んなわけないだろ! 誰も言わないから俺が言っただけだ!」

「ほんとかぁー?」



尚もニヤニヤして亮介は俺をおちょくってきて逃げ出したので追い駆けて下駄箱へ行くと……



「「あッ」」



そこには速水と速水の母親らしき人物が居た。 速水は絆創膏やらなんやら、さっきの喧嘩で付いた傷痕があった。 



そっか、親が迎えに来たのか。 こっぴどく叱られるんだろうなぁなんて思っていると……



「ふん!」

「こら琴音! なんだか琴音がお騒がせしたようでごめんね?」

「はぁ……」



速水はプイッとそっぽを向き親と一緒に帰って行った。



「なんだあれ? 速水って愛想ないよなぁ〜」

「そうだよな」

「それにしてもお前ショウゴに目付けられたんじゃね?」

「やめろよ、俺もそう思ってたんだから」



だがショウゴは次の日学校を休んだ、速水もだった。 速水は速水で怪我してるしショウゴもきっと親に怒られているんだろう。



その次の日ショウゴは学校に来た。 廊下ですれ違いになりこの前の事もあるのでヤバいと思って内心身構えながら歩いていると何事もなく通り過ぎて行った。



あれ? なんもなし? ラッキーと思ってそれ以降速水とショウゴは喧嘩する事はなくなって2人ともなんだかお互い避けているように見えた。



そしてその辺りから俺は速水の事を見掛ければ目で追っていた。 別に好きとかじゃなくてなんか速水が可愛くなってきたなと思ったからだ。



それは俺だけではないようで周りからも「速水可愛い」とか「凄く綺麗」とか聞こえるようになった。



元から速水は可愛かったのかもしれないが性格的な面でそれが引っ込んでいて男子と喧嘩する事がなくなってから女の子っぽくなった事でそれが前面に出たのかもしれない。



それから更に時が進んで小学6年生の秋になった頃、ショウゴが親の都合で転校する事になったらしい。 



俺は普通にそうなのかと思っていてショウゴが俺らの学校に来る最後の日の放課後だった。



クラスの奴らと放課後鬼ごっこをしていた俺は図書室の中へと逃げて誰も居なくてちょうどいいと思い一旦隠れていた。



そうしていると誰か入って来た。 本棚に居た俺はコソッと入って来た奴を覗くとショウゴだった。 



うわーショウゴかよ。 今日こいつ最後の日なのにこんなところに何しに来やがったんだ? 



そう思って見ているとショウゴはソワソワしていて落ち着かない様子で溜め息を何度も吐いていた。



少しすると図書室にもう1人誰か入って来た、それは速水だった。



「こんなところに呼び出して何? もしかして前の仕返し?」

「ちげぇーよ、別にそんなんじゃねぇし……」

「まぁウチもあんたに思うところはあったからちょうどよかったけど」



しばしの沈黙…… なんてところに俺は居合わせてしまったんだ、これじゃ出るに出て行けない。 



そして最初に沈黙を破ったのはショウゴだった。



「あ、あのさ、話は聞いてると思うけど俺転校する事になってさ、今日でこの学校最後なんだ」

「何それ聞いてない」

「はぁ!?」

「嘘……」

「はぁー、んだよ、こんな時に嘘つくなよ。 それでさ…… ごめんなさい!!」



ショウゴは目の前の速水に頭を下げた。



「何を今更と思うかもしれないけど女の子に手をあげるなんて最低だった。 リコーダーの事も…… もう二度としないって約束する。 だからごめんなさい!」

「ショウゴ頭上げて」



そう言われてゆっくりと速水にショウゴは向き直ると……



「ウチこそごめんなさい」

「え!?」



今度は速水頭を下げショウゴは驚く。



「あんたが全面的に悪い事は悪いけどウチもカッとなってすぐにあんたに手をあげちゃってたし仕返しにリコーダー投げたのはやり過ぎたって思ってた。 それになかなか言えなくてもっと早くに仲直りしたかったけど気不味くて話し掛けられなかった。 ウチこそ今更でごめん」

「あ…… うぐぐッ、いいってそんな事。 俺が悪かったんだし」

「うん、あんたが悪い」

「ぐぐッ…… 」

「嘘だよ、まぁお互い様って事で。 ぷぷッ…… あはははッ」

「はぁー…… ははは」



速水は笑っていた。 そんな速水を見てショウゴもつっかえていた物が取れたのか笑った。 



「それとさ」

「うん?」

「速水って綺麗になったな」

「…… ウチは別にあんたの事好きなわけじゃないんだけど?」

「はぁ!? 告白と勘違いすんなよ! 思った事言っただけだっての」

「知ってるよバーカ」



速水とショウゴはその日仲直りしてショウゴは別の学校へ転校して行った。 俺はその時の速水が自分よりも遥かに大人に見えてそれからも速水を目で追っていた、別に恋心とかじゃく子供な俺はただ単にその時の印象もあるがどんどん綺麗になっていく速水を見ているだけだった。



だから”黙って見ているなんてあんたもサイテー!”ってのは今でも変わってないと思うが。



そんな速水が俺とさっきまで一緒に居たなんてなと思うといまだに信じられない、そんでもって速水のトキめくタイプがこんな化粧男子だったとは。 いや訂正、速水の好きなタイプはデフォルトでこういう男子なんだろうな。





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