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その27


そういや速水の話で昔の事を思い出した。 記憶にあるのは小学生2年生くらいからの事だ。 美子が転校してくるずっと前の事。







◇◇◇








「うわぁああん! ショウゴ君達にヘアピン取られたぁー!!」



クラスの女子が泣いていた。 今西ショウゴ、同じクラスでガキ大将的な奴でイタズラ好きで掃除当番などをサボって女子と口喧嘩して最終的には女子のスカートとかめくったりしてよく困らせていた。



まぁどこにでもあるような光景だろう。 だがそんな奴らに女子だって黙って見てる奴だけじゃない、それが速水だった。 そしてそれにたてつく速水はショウゴと自然にぶつかっていくのは当然だった。



「マヤを泣かせたでしょ!? ショウゴ!!」

「それがなんだよ? 女のくせに」



俺が教室に戻って来るショウゴと速水は口論していた。 またやってると思いつつそろそろショウゴが手を出すはずだなと思っているとやはりショウゴは速水に向かってタックルした。



「この!」

「いいぞショウゴ! そのままそいつ裸にしてやれー!」

「ははッ! いいなそれ!」

「あんたを裸にしてやる!」



もつれあいになりショウゴが上になったり速水が上になったりとなかなか勝負がつかない。 



男子はその光景を面白がり女子はオロオロとしているか他の男子に罵倒を浴びせるが誰か先生を呼んだようで2人は引き離される。



「この野郎ー!!」

「何よ!? 悔しかったら来なさいよ!」



なんて言ってるが先生に抑えられているので2人とも腕と足をジタバタさせているだけだ。



「いい加減にしなさい!! 2人ともこのまま職員室だ!」

「ちッ!」

「べーだ!」

「この野郎!!」

「こら!!」



揉み合いで上着が伸び切った速水とショウゴが連れて行かれると女子は集まってザワザワ、ショウゴグループは終わったかという感じに散らばって行った。



その日の放課後廊下でばったりと速水に会った。 こちらを一瞥して不機嫌そうに歩いて来た。 俺はなんとなくそんな速水に話し掛けてみた。



「大丈夫だった?」

「何が?」

「あ…… さっきのショウゴとの喧嘩の事」

「ああ、あいつ女子いじめるとかサイテー! てかあんたも男の子なら助けてあげてよ! 黙って見てるなんてあんたもサイテー!」



そう言って速水は早歩きで去って行った。



そんな感じで速水は事あるごとに女子がいじめられると男子と喧嘩をしていた。 そして小学5年生の終わり頃……




「待てーー! ショウゴ!」

「バーカ! 待つはずねぇだろ!」



速水達とは違うクラスだったが休み時間に俺のクラスに2人が乱入してきた。



「返しなさいよ!」

「やーだねぇ! お前のリコーダーなんかベランダから落っことしてやろうか?」

「玄、またやってるぜあの2人」

「そうだなぁ〜」


亮介と話していた俺はいつもの喧嘩をボーッと見ていた。 



「そしたらあんたのもよ!!」



すると速水は背に回していた片腕を出すとリコーダーが……



「あッ!! それは俺の!」

「へへーんだ、あんたがやりそうな事くらいお見通しなのよ。 諦めて返しなさいよ!」

「くそがッ!!」

「ああッ!!」



ショウゴは速水のリコーダーをそのままベランダから下に落とした。 下に人居たらどうすんだ?



「やったわね! もう許さない!」



速水もベランダに出てショウゴのリコーダーを落とそうとしたがそれより早くショウゴが速水に組み付いた。 



「離しなさいよ! エッチ!」

「何がエッチだ野蛮女のくせに!」



この頃になるとなんとか速水はショウゴに喰らい付いてはいるが元々男子の中でデカかったショウゴに押され始めていた。



だが一瞬の隙をついて速水は組み付かれながらも窓に向けてリコーダーを投げるとそのまま落っこちていった。 だから下に人居たらどうすんだよ?



「てめぇ!!」

「ざまあみろ!」



速水はショウゴの体を何発かついでに殴った。 



「いってぇーなッ!!」

「きゃッ」



速水の肩を掴んでショウゴは前蹴りすると速水は教室の扉にぶつかって扉が外れる。 



なんか今日は一段と激しくないか? そう思った時それでも怒りが収まらないのかショウゴはグーで速水を殴り始めた。



「お、おい! もうやめた方がいいって!」

「ああ!?」



ショウゴの近くに居た男子がショウゴを抑えるとようやく先生が駆け付けた。 



「またお前らか!! やめなさい!」



ショウゴが退くと速水は両手で頭を押さえて震えていた。 というか泣いていたと思う。 今まで速水が泣いたところは見た事がなかったので皆シーンとなる。 



”黙って見てるなんてあんたもサイテー!” その時何故か昔速水に言われた事を思い出してしまった。



「で? なんでこうなった? 今西、速水に何した?」

「はぁ!? なんで俺に言うんだよ! そいつが俺のリコーダーをベランダから落としやがったから」

「ショウゴはその前に速水のリコーダーを落としました」

「げ、玄??」

「おい、てめぇッ!!」



ハッとした。 意識せず俺の口からそんな言葉が出ていてショウゴに睨まれる。



「いいからお前は職員室だ! あと速水は保健室だ」



他の女子が速水に近付いて「大丈夫?」と言い背中を優しく摩ると速水は下を向いて立ち上がり教室から出て行った。




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