その23
「んー、何にしようかなぁ、あれもこれも美味しそうだし…… 2品頼んじゃおうかなぁ、でも足りるかなぁ?」
「いつも思うけど頼み過ぎよね? というより食べ過ぎ。 よくそんな食べて体型キープしてるよね?」
「食べるの我慢してると後からもっとお腹が空いて間食しちゃうの。 そうなると太るんだよ、だから3食きっちりお腹破けそうになるくらい食べて後は食べないこれ基本!」
「お腹破けそうにって表現…… の割には今日ガツガツ間食しまくってたじゃん」
「そ、それは運動量を考慮して食べてただけだからプラマイゼロだよッ」
相変わらず美子の言ってる事は顔を見なくても美子だとわかるような訳わからん事言ってるな。
というかこんな時に限ってなんでだろう? 急激な尿意に襲われた。 トイレ行きたい、けど行くのは良しかもしれないけど戻ってくる時にほぼ確実に顔を合わせるかもしれない。
だが行くに行けない葛藤でこんな考えが過ぎってきた。
そもそもなんで姉貴と飯食ってるなんてバレるの恥ずかしいんだ? それを恥ずかしいと思っている方が恥ずかしいんじゃないのか?
だからここは普通にトイレに行き何食わぬ顔をして戻りそのまま見られるであろう美子達にも何食わぬ顔で適当に挨拶をして「これうちの姉貴」とさもありなんとして普通に戻ればいいだけでは?
つーか後ろの3人お喋りに夢中になってるのに俺なんか行ったり来たりしているの気に留めるか? 見られるかもしれないなんてそんな考えこそ自意識過剰だろう。
ふふ…… そうだよな、何も恐れる事ねぇな、この尿意で俺大分大人な思考回路になったんじゃないか?
「あんたさっきから考え込んだりしてると思ったらいきなりニヤッとしてキモいんだけど?」
「姉貴、俺トイレ行ってくるわ」
「?? その悟り切ったドヤ顔なんなの?」
そのまま流れるように華麗にトイレに駆け込み用を済ます。
ほら、なんにも問題はない。 あとはこのまま自然に戻ればいい…… とトイレを出た所で。
「ふあッ!! え? 玄ちゃん??」
「み、美子……」
最早この流れがこうなるであろうという事が完全に吹っ飛んでいた。
「なんだ、お前も来てたのか」
「うん、琴音達とね。 玄ちゃんひとり?」
ひとりと決めつけんなよ、まぁこんな事ならひとりの方がよかったけど。
「いや、姉貴と来てた」
「え? 玄ちゃんのお姉ちゃん? 見たい見たい、良かったら私達と一緒に食べようよ!」
あー、こうなると思った。 一緒に食べるとかって女4人に男俺ひとりって周りからどんな目で見られるだろう? バランス悪過ぎだろ。 尿意がなくなった俺は至っていつもの思考回路に戻っていた。
「でもせっかく美子達3人で一緒に居るところを邪魔するのは悪いし俺は遠慮しとくよ」
まぁお前の目の前の席に俺と姉貴が居るんだけどな!
「玄ちゃんはお友達なんだから邪魔なわけないでしょ? それに私のお友達は琴音達ともお友達って事だから大丈夫!」
「そうなの?」
「私の中では!」
おーい、まったく説得力ないぞー。 てか見つかったんだしもう観念するしかないな。
「長かったねトイレ、でっかい方だったの? って……」
「あれ? 由比ヶ浜?」
「え、居たの?」
姉貴と速水達は俺と美子が一緒に戻って来たので?なとなる。
「そこで偶然会っちゃった」
「あ、そうなん? ふぅーん。 って由比ヶ浜その人誰?」
「うちの姉貴」
「なぁーんだ、玄の同級生か。 てか皆可愛いじゃん。 へぇ〜、あ! 玄の姉のカヤだよ、よろしく」
「あ、どうも。 ウチは……」
姉貴と軽く挨拶をすると姉貴は美子達をマジマジと見て感心しているが美子達もうちの姉貴をマジマジとと見ていた。
「お姉さん美人…… 由比ヶ浜と似てる?」
「ううーん、似てると言えばどこか似ているような……」
「似ていないような……」
いやどっちだし! これ今日2回目だぞ?
「あ! でもでも!」
俺が椅子に戻ると木村は背もたれに腕を乗せ再び俺の顔と姉貴の顔を見た。
「何かなぁ〜葎花ちゃん?」
「ふっふ〜ッ、面白い事考えちゃいました!」
木村はバッグからポーチを取り出した。 嫌な予感……
「じゃじゃーん!」
「何する気? 葎花」
「由比ヶ浜をサラッとお化粧してしんぜようかと」
「はぁ!? そんなのいいっての!」
「え? 面白そうじゃん?」
「なんで姉貴もノリノリなんだよ?」
「やってみれば? 葎花」
「おー! 琴も見てみたい?」
速水まで……
「姉貴! 弟の化粧した姿なんてキモくてごめんだろ!?」
「えー? いい機会じゃん。 やってもらったら?」
「ほうら、お姉さまのお許しも出たしいいじゃん減るもんじゃないし。 美子もそう思うでしょ?」
「あー、ちょっと見てみたいかも」
おいおい…… 俺ってそういうのは趣味じゃないぞ?




