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その22


「はい、たぁーんとお食べ」

「うるっせえなぁ。 言われなくても食うっつうの」

「ありゃりゃ、恥ずかしがっちゃってぇ〜。 昔は「大好きお姉ちゃん!」って言ってたのに今は反抗期真っ只中ですかぁー?」

「いつの話してんだよ!? 大体ありえねぇだろ、姉貴とファミレスなんて」



どうして姉貴とファミレスなんてしてるんだ俺? それはそう、遡る事1時間前……





年が明けて4日後、俺は受験の追い込みのために参考書を買いに出ていた。



午後まで寝ていて夕方近くに家を出て目的の物を買い帰り道の駅の近くで姉貴が遊んでいたのか姉貴とその友達と遭遇。



「あ……」

「え? 玄じゃん。 何してんの?」

「何してんのはこっちのセリフだ」

「んん〜? この子がカヤの弟の玄ちゃん?」



また玄ちゃんかよ、美子といいちゃん付けで呼びやがって。



「あんまカヤと似てないねぇ?」

「そうかなぁ、でも目とか口元はちょっと似てるかも」

「え〜? どれどれ」



姉貴の友達は玩具でも見つけたように俺の顔をジロジロと見出す。 グイッと来るからたじろぐと俺の後ろに居た姉貴の体にぶつかると後ろから手を回されてガッチリと姉貴にホールドされてしまった。



「ほらほら、あんた達がねっとり見るから玄が恐縮しちゃったじゃん。 この子こう見えてシャイだから」

「ええー、シャイなの玄ちゃんって? 可愛いじゃーん」



姉貴の友達が人差し指で俺の頬にツンと触れた。 そんな様子を姉貴はニヤニヤとして見ていた。



「ところで玄、あんた何してるわけ?」

「何してるはこっちが言いたいっつの! 参考書、参考書を買ってたんだよ!」

「参考書? カヤの弟ちゃんって勉強熱心ねぇ」

「いやこの子受験生だから。 来月うちの高校受けるんだもんねー?」

「わぁー、お姉ちゃんの後を追っかけてくるんだねぇ、ふふふッ」



クスクスと笑われる。 シスコンっぽく言うのやめろよな……



「本も買ったようだしお姉ちゃんと一緒に帰ろっか? 私らも帰るとこだったし」

「え? なんで姉貴なんかと」

「あははッ、仲良いね! 玄ちゃん良かったねぇ、綺麗なお姉さんと帰れて。 じゃあまたね!」

「はいはーい、またねぇー!」



俺の後ろにくっついたまま姉貴は友達に手を振った。 友達の後ろ姿を少し見送った後「じゃあ私らも帰ろうか」と言って俺の手を引っ張るがいい加減この歳でそれもないだろと思い振り払った。



「ありま…… 反抗期だったね玄は」

「反抗期じゃなくてもやるかよ? 帰るんだろ、とっとと行くぞ。 まったく人の事おちょくりまくりやがって」

「私だけになると文句言うんだね、さっきまで借りてきた猫状態だったのに。 あ、そーだ! もうこんな時間だし夕飯どっかで食べてかない?」

「は?」

「この時間まで帰ってないならママも夕飯どこかで食べてくると思ってるでしょ? てかもうママにそう送信しちゃったし!」



流石姉貴、俺の意見をまったく聞かずに物事をどんどん進めてきやがる……



「ふざけんな! 俺金なんてねぇからな」

「お姉ちゃんの奢りだから安心しなよぉ〜、てか家族では行ったことあるけどお姉ちゃんと2人で行くなんて初めてじゃない?」

「そぉいやそうかもな」

「だったらお姉ちゃんがデートの練習してあげよっか? むふふッ」

「姉貴…… それより姉貴の方こそこんな茶番してる暇あったら彼氏でも見つけた方が」



言い終わる前に姉貴のゲンコツが飛んできた。



「さーて、じゃあそこにファミレスあるから行こう!」

「ファミレスかよ!?」

「玄にご馳走するなんてファミレスで充分よ」

「デートの練習とかほざいてたくせに」

「バカねぇ、学生がそんなにお金持ってるわけないんだからファミレスでちょうどいいのよ!」



店内に入り俺は窓側の奥の席に座った。 もし知り合いなんて居たらめちゃくちゃ恥ずかしいぞと思ったがまぁそれらしき奴らは居なかったので良しとしよう。



「ハンバーグ…… ふぅん、ハンバーグねぇ」

「何か文句あるのかよ?」

「ふふふッ、玄って昔から好きだねぇって思って」



お子ちゃまだと思ってんのかこの野郎。 まぁタダだし食ってやるか。



そして注文したものが来て食べているとすぐ後ろの席から知ってる声が聴こえた気がしてハンバーグが喉に詰まりそうになった。 



「あー、疲れたぁー」

「疲れたのはあんたのせいでしょうが」

「私はもうお腹ペコペコ」

「あははッ、さっきからお腹グーグー鳴ってたもんね、隣のオッサンにアタシがお腹鳴らしてんじゃないかと思われてちょー恥ずかったし!」

「ごめーん、どうしても抑えきれなかったの」

「どんだけ飢えてるのよ? お昼もあんたが1番多く食べてたのに」



美子と速水と木村の声だと思う、てか絶対そうだ。 まさかこんなところに…… なんて間が悪いんだ。



「ゴホッゴホ!」

「ほらほら、横着するから」



姉貴がナプキンを取って俺の口の周りを拭くがこんな所を見られるわけにいかない、ガシッと姉貴の腕を掴んだ。 一応背を向けているから俺が余計な事しなきゃ気付かないよな? 姉貴は遥とは面識はあるが美子とはないはずだ。



「ちょっと〜、拭けないじゃん」

「しー!」

「ん? 何急に?」



よりにもよって美子達が俺の席の後ろに来てしまうなんて……



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