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その2


「ね? 寒いは寒いけどちょっとは風を凌げるでしょ?」

「そうだな」



思いっきり出口側に寄ってるから容赦なく風は俺の右半身に吹き付けてるけどな!



「それにしても一緒に家出したっての事も偶然なのに向かった所が2人ともこの象さんの中なんて凄いね!」

「七瀬ってここの近くだったのか?」

「うん、あそこ通ってあっちにグイーンと行って曲がると私の家」



なんてアバウトな表現なんだ、まったくわからん。



「だったら由比ヶ浜君の家もこの近く?」

「ああ、七瀬の行く方向の反対側に少し行くとコンビニがあってそこ過ぎた辺りが俺の家だよ」

「なんだ、私と由比ヶ浜君って結構近いとこに住んでたんだね!」



するとぐうぅぅぅ〜という音が聞こえた。 え? と思い七瀬を見ると顔を真っ赤にさせていた。



「こ、これはね!」

「ん? あー、気にする事ないわ、誰しもある生理現象だろ? 屁くらい七瀬でもするもんな」

「ち、違ぁーーーうッ!! オナラじゃなくてこれはお腹の音!」



七瀬は真っ赤になりながらポコポコと俺の肩を叩いた。 俺の勘違いとはいえ自然な感じで七瀬みたいな可愛い子にこう触れられるとドキッとする…… かもしれない。



「え? ああ、そっちか、悪い。 こんなのあるけど飲む?」

「あ、それそこの自販機にあった…… いいの?」

「七瀬はお金持ってないのか?」

「着の身着の尽出てきちゃったからお金持ってないの。 帰ったら返すから!」



家出と言う割に普通に帰る気満々なんだな…… 人の事は言えないかもしれないが。



「あーッ、美味しいしあったかい〜!」

「よっぽど腹減ってたんだな?」

「んあッ! 私ったら…… はい、どうぞ!」



七瀬は飲み掛けのコンポタを俺に渡してきた。 ま、マジか? 間接キスをしろと? 非常にありがたい申し出なんだけどこんなにも恥ずかしいのは俺だけだろうか?



「?? 飲まないの?」

「い…… あ、いいのか? ええと、か、関節……」

「ふえ? あッ!!」



そんなものまったく意図していなかったのか七瀬は俺に言われてまたも顔を赤らめる。



「わ、私別に泥水啜った野生動物でもふ、普通にチュー出来るから!」

「いきなり何その表現!? そのくだり必要か? 俺が泥水啜った後の野生動物的な何かって言いたいのか?」

「ご、ごめん! やっぱ泥水は無理かも……」

「え? そこを否定するって事は俺はやっぱそうなの?」

「あれ? 何言ってんだろ私?」

「「…………」」



ここまで話してわかる事は七瀬はやっぱり結構アホの子なのか天然なのかも。 でも見た目は抜群に可愛い、黒髪ロングで色白で長いまつ毛に大きな目にぷくっとした唇、唇…… ? あ、関節キスの事でここまで変な会話になってたんだ。 俺もアホだわ。



「実はさ、俺コンポタそんなに好きじゃなくて間違って押しちゃってさ。 だから今まで飲まないで持ってたんだよ、新しいの買って飲むからそれ全部あげるよ」

「あ、ああ! なるほど、そういう事ならありがたく頂きます」



ペコっと俺にお辞儀をした。 うん、いい奴だな。 それに話しててちょっと?な部分もあるけど面白い子だよな。 こんなキャラでこの見た目だし人気者なのも頷けるな。



自販機に行って新しい飲み物を選びに行く。 実はコンポタ好きなんだよなぁと思いつつおしるこを押した。 そしてあれだけで足りたのかな? と思いまたコンポタを買った。



戻ると七瀬はまた俺に頭を下げた。



「由比ヶ浜君ご馳走様でした。 お腹が猛烈に減っていたので感謝感激です」

「それはどうも。 てか足りた?」

「え?」

「また間違えちゃって出てきたんだけどもうひとついる?」

「由比ヶ浜君って結構ド…… じゃなかった! い、いります! 実は飲んだらさっきよりお腹空いちゃって」

「今ドジッて言おうとしたろ? ぶった切るのが遅過ぎだよな?」

「全然そんな事思ってません! ありがとう、でも悪いからお金取ってくるね」

「家出中じゃなかったのか?」

「あ! そうでした…… やっぱりもう少し待って下さい」



俺の家出の意思も弱いと思うがこいつはちょっと出掛けてくる程度の感覚かもしれないな。 まぁそれはそれでいいが。



「明日学校どうしようかな…… 」

「あー、明日数学あるよねぇ。 私少し苦手なんだ」

「数学は大体あるから取り立てて言わなくてもいい気が…… というか家出は?」

「あうッ! そうだった、私は家出の真っ最中、学校なんて知りません! 学校なんて知りません!」

「2回言う必要ないだろ……」

「ねえ由比ヶ浜君は学校で何考えてるー?」



学校なんて知りませんから即学校の事を聞いてくるとは……



「そうだなぁ…… とりあえず早く終わらないかなぁとか受験怠いなぁとか」

「あははッ! いいなぁ、中学生らしい悩みだね」

「そう言うお前は?」

「私もそんな感じ!」

「ほ、ほぉ……」



いや、何かお前はもっとこう違う考え方してます的なニュアンス醸し出してたろ? でもこいつの天然さと可愛さが相まって嫌な感じはしないな。



「あー、でもねぇ。 せっかく転校してきて周りが知らない人達ばかりで頑張って馴染まなきゃって思っててようやく仲良くなった人達と高校でまたバラバラになっちゃうかもしれないって思うと少し寂しい気もするよねぇ」

「けどお前と話しててわかるけど七瀬って面白いし高校に行ってもすぐに馴染めると思うけどな」

「これでも真面目に接してるつもりなんだけど面白いとは…… まぁ面白いならいっか!」



七瀬は俺を向いて二パッと笑った。



「あー、明日数学あるのかぁー」



だから学校なんて知りません! と2回も宣言したのに…… ってつっこむのももういいか。



「ナオちゃんどうしてるかな?」

「ナオちゃん?」

「あ、弟ね。 小学4年生なの」

「ふぅん、俺の姉貴は高1だけどな」

「じゃあ由比ヶ浜君もお姉さんと同じ高校に行く感じ?」

「なんでそうなる? って言いたいけど近くだし遠い高校に通うのも怠いからそうなるかもな」

「なんだ、やっぱりお姉さんと仲良しなんだ? うん、やっぱりそうだよね!」



1人で何か納得している……



「そうと決まれば!」

「何がそうと決まればなんだ?」

「はッ! そうだった、お姉ちゃんなんのためにこんな寒い思いしてるんだって話だよね!」

「あ、まぁそうだけどもう帰ったら?」



するといきなり七瀬はガーーンッと悲壮な顔をした。 



「あ、いえ。 そう直で言われると私って物凄く意志が弱い女だと……」

「いや、そうでもない…… とは言い切れないけど」

「言い切れないんだ!? ガーン」

「でも弟思いのいい姉ちゃんだって事はわかったよ」

「えへへ、それほどでもあるなぁ〜」



コロコロ表情変わる奴だなぁ。 



「なんか由比ヶ浜君とは話が合いそうだね! いろいろ親切にもしてもらったし」



い、いや、そうかなぁ? 親切には対応したつもりはあるけど数学苦手だなぁくらいと家出して大変だなとしか大した会話もしてないような。



「せっかくちゃんとお話ししたんだしいつまでも由比ヶ浜君なんて他人行儀だとアレだし…… 玄、うーん、玄……」



俺の名前を呟き俺の顔をジーッと見た。 美少女に見つめられるってこんなに緊張するのか、なんにもないって事はわかってるけどなんだか寒気すらする…… 右半身は実際寒いけどな。



「玄ちゃんだ! うん、玄ちゃんがいいね!」

「玄…… ちゃん?」



明らかに俺が弟だからその流れでそう呼んだ俺の名前……



「私の事もおね…… あッ! 美子でいいからね!」



お姉ちゃんと呼ばせようとしたろ? 姉属性でも持ってるのかこいつ? 持ってたわ……




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