その17
「え? 玄がクリスマスに予定がある? へぇ〜、もしかしてお相手はこの前のあの子?」
クリスマスの日のお昼に母さんに予定を話すと案の定言われる。
「マジ? 玄がお姉ちゃんのこと私を差し置いてクリスマスデート!?」
「カヤ、玄に追い越されちゃったわね」
「わ、私だって仲良い男子くらい居るんだから!! これでも結構モテるのよ!」
「あら、お父さんが聞いたらショック受けそうね」
「パパには言わないで〜! うるさいから」
「つーかデートじゃないっての。 俺以外にも居るし」
ん? でも考えたらまた男俺1人じゃないか? 昨日は美子がたまたま直也を連れて来たからバランス取れてたけど。 やっぱ亮介も誘った方がいいものか……
「玄以外に誰が来るの? いつもの亮介?」
「いつもの亮介ってなんだよ? それになんで言う必要があるんだよ?」
「ママ〜、玄は中学生なのに夜遊びしようとしてまーす! 保護者としてそれくらいは知っておいた方がいいんじゃないですかぁ〜?」
「カヤの言う通りね、何か間違いでも起こしたら親御さんに顔向け出来ないものね」
「間違いってなんだよ!? ただの興味だろ!」
くそ、姉貴の奴余計な事言いやがって。
「確かに前に来た宮野も来るよ。 それとその友達も」
「女?」
「………… ああ」
「きゃー! 何かあったりして!?」
「何かあっても避妊はしとかないとね」
「ブーーーッ! アホな事言ってんじゃねぇぞ! そんなとこまで行くわけないだろ! 同じクラスの奴だぞ!?」
「うふふッ、同じクラスだからとか同級生に噂されるのが恥ずかしいとかまだまだ子供ね玄は」
「姉貴だってガキのくせに」
「はぁ〜? もう出るとこ出てるし大人の女ですよぉ〜!」
「カヤ、玄やめなさいったら。 聞いてて恥ずかしいわ、特にカヤ!」
「ふぁ〜い、遥ちゃんだっけ? あの子テンション低いけど顔は合格点だったからキープしといて損はないよ玄」
「ウゼェ……」
けど実際可愛い顔してるんだよな宮野の奴、性格で損してるだけであって。 よくよく考えたら俺ってそんな美子と宮野と友達になれたなんて物凄くラッキーなのでは? しかも高校も同じとこらしいし。
おっとそんな都合のいい事考えてないで美子と宮野に亮介も来ていいか聞いてみないと。
確認を取ると全然構わないそうだ、美子はだけど。 宮野は大丈夫かな? それと勝手に話を進めたが肝心の亮介の方にも連絡しないと。
『亮介、今大丈夫か?』
『今? 今忙しい』
『悪かったな、それでお前に相談なんだけど今日の夜って暇か?』
『え? 暇かって?』
何故か電話越しから亮介の不適な笑みが聴こえた。 何そのウザい反応は? 誘うのやめたくなってきた。
『俺さ〜、忙しいんだわ』
『それはわかったけど。 じゃあ無理そう?』
『くくく…… 急に女気出始めたのはお前だけじゃないんだぜ?』
『は? 何言ってんだ?』
『なんと今俺! 速水と木村と七瀬と一緒に居るんだぜ? 悪いな玄、お前だけハブッちまって』
『え? そうなの?』
『違ぁーう! 違うよ玄ちゃん!』
遠くから美子の声が聴こえた。 亮介の言っている事はどうやら本当らしい。 美子が亮介の電話を取り上げたのか美子が代わった。
速水達は美子とこのままクリスマスを祝う予定だったらしいが美子は夜は俺と宮野と一緒に祝う予定もあるので美子ももしかしたら俺も亮介と祝うかもしれないと思い埋め合わせに速水達とのクリスマスに呼んだらしい。
何故に亮介とクリスマスを祝わなきゃいけないのか? 小学生じゃないんだぞ? まぁいいか、亮介も良い思いをしているようだし。
『てことでさ、夜には玄ちゃん達とだからさ』
『俺はまぁそれで構わないけど』
『良かった、じゃあ公園で待ち合わせだよ?』
『わかった』
夜まで時間があるので勉強もしてみる…… が女子とクリスマス祝うなんてイベントがあるせいかあまり捗らなかった、仕方がないので暇を潰すためにゲームソフトでも買いに行こうと思い外出すると店の近くでとても恥ずかしい奴を見つけてしまった。
「す、好きでした」
「…………」
「一目惚れだったんだ」
「おい」
「うおあッ!!!」
速水達と一緒に居たはずの亮介が電信柱相手に告白をしていた。
「ちょッおまッ…… な、なんてところに!?」
「いや、俺も見なければよかった。 それになんでこんなところにってのは俺が聞きたいんだけど? あ…… すまん、見なかった事にするわ」
「おい!! そういう気遣いされると余計に恥ずかしいんだよ!」
「じゃあ聞くけど何してんの? 電信柱にこ…… こッ」
「くそがぁーーッ! 笑い堪えてるだろ!?」
「ごめんごめん、ただ逆の立場だったらお前笑いこけてるだろ?」
「………… だな」
お前も充分くそじゃねぇか。
「やっぱ聞かない方がいいよな、俺は用事あるからとっとと行くわ。 大丈夫だ、今見た事は……」
「いやいや! こうなったら聞いてくれよ!? 今さ、速水の家に招かれてたんだけどなんか映画でも観ようかって事になってだったら俺が適当なの借りてきてやるよって出て来た最中なんだけどさ〜」
なるほど、だったらこいつとは行き先同じだな。
「それで前から思ってたんだ、木村に告ってみようかと…… そんでダメだったら速水と七瀬にも。 悪く思うなよ?」
「そうか、思い切った決断だ…… ん? なんか速水と美子にもって聴こえた気がしたんだが気のせいか?」
「いや、言ったぞ」
「…… お前逆にすげえな」
どっちか失敗して仮に2人目、3人目が成功しても失敗しても木村と速水と美子に一気に嫌われそうなセットまで付いてきそうな決断をこうも易々と実行しようとするとは……
「で、どう思うよ?! 七瀬の情報だとみんな彼氏がまだ居ないそうだ」
「どうって…… どんだけ欲張りコースなんだよ、彼氏が居ないとしても正に当たって砕けろと言うかなんていうか、なんでそんな事急にしようとしてるんだ?」
「バカか!? クリスマスだぞ? 告白成功率が上がる数少ない日だろ? そんな日に何もしない奴がいるかよ! 俺達もう高校生になるんだぜ、入学する前に彼女くらい欲しいだろ? しかも七瀬トリオとせっかく仲良くなれたんだし言わなきゃ損だろが!」
「わかったわかった、でも木村がダメだったら速水、美子ってさ、絶対その3人にお前の行動が伝わるぞ、そしたらせっかく仲良くなれたのにぶち壊しになるんじゃないの?」
「くくく、ふふふ…… だが俺はやる!!」
「お、おう、そうか…… 俺は友達としてお前を応援するけどさ」
なんてゲスい戦法なんだ。 それに速水にもだと!? まぁ速水の好みは俺でも亮介でもないと思うし慰める言葉は考えていた方がいいかもしれん。