第一章 得体のしれないもの
この作品は以前にpixivにて投稿したもので修正して新たにここで投稿しています。
私自身小説を読むことが苦手な為、読みやすくしています。何年か前に初めて書いた小説ですが
とても自分では気に入っています。恋愛とSFと楽しめるのではないかと思います。
ただ文才がないため、多少読みづらい点はお許しください。
「お姉ちゃんお会計早くして!」
「すみません!」焦れば焦るほど、なおみの手は思うようには動かない。
「ちょっと!まだ!?」なおみの打つレジに並ぶ客の声が遠くの方から
鋭く耳に響く。
不器用な、なおみが始めたレジ打ちというアルバイトは彼女にとっては
到底、勤まるようなものではなかった。
隣のおばさんは、あんなにも簡単にこなしているのに・・・
無理・・・
出来るわけない・・・
結局バイトの先輩と二位体制でなんとかこなす事は出来たがどうしても
みんなの目が気になる。
きっとこう思われている・・・
もうひと月よ?!若いくせにいつになったら仕事できるの?!
口には出さなくったってわかるもん。
どうせ・・・
とろいし・・・
覚え悪い・・・
要領も悪い・・・
空気も読めない・・・
どうせ・・・
「お先に失礼します。」
先輩に挨拶をして、おそるおそる
目を見た。
「お疲れ!」
目も合わせてもらえない・・・
はー・・・なおみは深い溜息をついた。
外の世界に出たのは1年ぶりだった。その間ずっと部屋にひきこもっていたのだ。
日の当たらない生活からいきなりバイトって・・・
その日はなおみの気持ちとは裏腹にそこそこ天気も良かった。
レジのアルバイトは母親に泣いて頼まれた。こんな私を
立ち直らせたいと母も必死なのだ。でもやっぱりこうなった。
もういやだ。もうやりたくないこんなの。
私頑張った。今日はがんばった。
母は私のことを一生懸命育ててくれた。私の将来の事だけを考えピアノ、塾、習字に
そろばんと、ほんとに色々とさせられた。
私の意志なんてそんなものはどこにも無かったけれど。
もう・・・バイトなんてやめよう。
努力はした・・・
無理だし。
家に帰ろうと歩いていると
廃品回収のおじさんが叫んでいる。
「オーライ!オーライ!」
もうこれ以上積めないでしょ・・・今日は大量なんだな・・・
この仕事いくらになるんだろう?私でもできるかな?
いや・・・無理・・・体力もないし力仕事なんて・・・
やる気はあってもとろいと叱られる・・・
あ!!
ドンと積まれたトラックから一冊の本が落ちてきた。
「あの!」
あ。行っちゃったよ。て、私のことなんてどうせ見えてないか。
影薄いし・・・
「助けるよ」か・・・そのタイトルがほんの少し自分を救ってくれたような感じがして、なおみはその本を持ち帰った。
「ただいま。」
「おかえり!お疲れ様!ご飯出来てるわよ!」
「あー部屋に持ってきて。」
「下で一緒に食べない?」
「いい。」
せっかく優しく出迎えてくれた母に背を向けて階段を上がり自分の部屋へと入った。
バッタン!!!
いつもより強くドアを閉めた。そして手に持っていた本をドアに向けて投げつけてやった。
もうアルバイトなんてしないから!こうなったのはみんなあんたのせいだ!
一緒にご飯?あんたなんか認めない!!絶対にいやだ!
と、本当は言いたかったが、私がただで生活していられるのはあの母親のおかげだ。我慢するしかないんだ。バイトだってもうやめるし。
あーいらいらする!!あの母親に、世の中に、そして自分に一番いらいらする!
むかつくむかつく!!あーだれか助けて!!私ってずっとこのまま?・・・一生・・・??
助けて!!!
助けて!!!
誰か
助けて!!!
ガタガタ。 ガタガタ。
何?地震??
30秒ほどだろうか・・・ぐらぐらと揺れたベッドはぴたりととまった。
なおみはしばらくの間動くことが出来なかった。部屋においてあるものが少し揺れてはいたがそれが
確実に止まるのを待った。
すると、カーテンを閉められた薄暗いその部屋がオーロラのようなものでいっぱいになった。
何?この光は??
それまで見たことのないエメラルドグリーンの光が部屋全体に広がったとたん、しめつけられるような頭痛に襲われ、なおみは頭を抱えベットから転げ落ちた。
しばらくするとそれはおさまった。
「何?何だったの?夢?いや、今帰ってきて寝てはない。」
「コンコン。」
ドアの方を見た。お母さん?今の地震大丈夫だったのかな?まあそんなに
揺れたわけではないけど。さっきの光見たのかな?
・・・と、ドアを開けてみた・・・が誰もいなかった。
あれ? コンコンって音がしたはず??
不思議に思いながらドアを閉めた。
ベットに戻ろうとすると
「コンコン。」
え?
よく見ると、さっき拾ってきた本がドアの前でカタカタと動いている。
おそるおそるその本に手を伸ばそうとした。
「いたっ!」
本がなおみの頭をめがけて飛んできた。
「何?!」
「いたっ!!」生きているかのようにその本は再びなおみの頭を攻撃した。
「は?!何なの!!ていうかなんか・・・ムカつく!!
馬鹿にすんな!!!捕まえてやる!!」
「待てー!」
本は、なおみから逃げるように部屋の中を飛び回っている。
なおみは押し入れに眠っていた虫取り網を取り出し本を追いかけた。
バタン!ドタン!
1階のリビングの母親がなおみの部屋から聞こえてくるその騒々しい音を聞き不安になった。
なおみ・・・私またあなたを荒れさせてしまったわね・・・
アルバイトなんてさせなかった方がよかったのかしら・・・あーどうしたらいいの??!!
「よし!捕まえた!!動くな!!」
本がデスクに来た時に捕まえ、網の上からなおみは手で抑えた。
中でバタバタしていた本がとうとう観念したのか、動きを止めた。
「わかった!わかったからその網どけてーや!!」
「きゃっ!!」
捕らえた本が突然しゃべりだし、なおみは驚き床に落とした。
よく見ると本の間に緑色の尻尾 のようなものが挟まっている。再び本を拾い
その尻尾を引っ張った。だかびくともしない。なおみはもっと思い切り引っ張ってみた。
「もー痛い痛い!!分かった出るから!!」
「またしゃべった!!」
なおみは怖くなり勢いよく本を放り投げた。
その時その本からさっきみたものとは違う光が、今度は黄色のような太陽がそこにあるかのような
激しい光が放たれた。
「うわっ!!」
なおみはあまりの眩しさに腕でその目を覆った。
しばらくして光が消え、なおみの部屋のデスクの上に緑色のバッタのお化けのようなものが座っていた。
なおみの前に突然現れた化け物・・・
何のためにここに来たのか・・・
次回をお楽しみに・・・