散歩
音の描写が多いです。
作者の中では、音の描写が無い所は基本的に無音のイメージです。
午前1時。
僕は日課の散歩に出かけた。
僕の住む町は静かだ。
まるで人の気配がない。
でも人は確かにいるんだ。
ほら、窓からこちらを覗いてる。
僕が目を向けると人影はスッと消える。
カツン、カツン、カツン。
夜の町には僕の足音だけが響く。
僕はこの音が好きだ。
眠れない時はこの音を思い出す。
向こうから誰かが来た。
帽子を被った男だった。
すれ違いざま
「今晩は。」
僕が言った。
返事はなかった。
僕は振り返った。
誰もいなかった。
僕は再び歩き始めた。
カツン、カツン、カツン。
夜の町には僕の足音だけが響く。
公園に着いた。
ブランコ。
滑り台。
ジャングルジム。
塗料の剥げた遊具達が月の光に淡く照らし出される。
ブランコが揺れていた。
風はなかった。
キィ、キィ、キィ。
僕は黙ってそれを見ていた。
揺れは次第に大きくなった。
キィ。キィ。キィ。
夜の町にはブランコの揺れる音だけが響く。
少し歩いて町を出る。
寒さに凍った草の上を行く。
ザクッ、ザクッ、ザクッ。
町とは違う僕の足音。
こちらの足音も僕は好き。
森に入る。
木から縄が垂れている。
先にあった輪は、以前僕が切った。
今は先の別れた縄があるばかり。
縄の下には墓がある。
僕が作った。
そこにぶら下がっていたものを埋めた。
ザッ。
ザッ。
ザッ。
僕の足音では無い。
ここを通るといつも聞く音。
土の崩れるような音。
これを聞くたび僕は思う。
これは土を掻く音かもなと。
あの時埋めたあれが。
ゆっくりゆっくり這い出してくる。
あれはまた町に戻りたがっているのか知らん。
今度、公園の砂場にでも埋め変えてあげようかな。
そんなことを思いながら踵を返す。
同じ道を辿って帰宅する。
ザッ。
ザッ。
ザッ。
ザクッ、ザクッ、ザクッ。
キィ。キィ。キィ。
カツン、カツン、カツン。
「ただいま」
僕が言った。
返事は無い。
でも、家族は居るんだ。
ほら、風呂場からシャワーの音がする。
あれは姉だ。
いつもこの時間に入ってるな。
僕も入りたかったのにな。
まぁ、朝でいいか。
僕は二階に上がって自室に入る。
カビ臭い布団に潜り込む。
2時間程経った。
なんだか目が冴えて眠れない。
カツン、カツン、カツン。
僕はあの音を思い出す。
心落ち着くあの音。
段々と眠りへと近づくのが分かる。
カツン、カツン、カツン、カツン、ギシッ。
僕は目を開ける。
今のは?
床の軋むような音だった。
姉だろうか?
シャワーの音はまだ聞こえる。
長風呂だなぁ。
僕は耳をすませる。
足音は思い出さない。
ジャリッ、ジャリッ、ジャリッ、ギシッ、ジャリッ。
あぁ。
僕は理解した。
その音がなんなのか。
音の主が誰なのか。
やっぱり土の中は嫌だったかな。
いや、ここに来たと言うことは寂しかったのかな。僕はあれを家族に迎え入れることにした。
あとで姉にも言っておこう。
ギィ。
ドアが開く。
土にまみれていたが、そこに居たのは、あの時僕が埋めたものに間違いなかった。
僕はため息をひとつついて、
「家にあがる時は土を落としてね」
と、新しい家族に言った。
読んでくださりありがとうございました。
以下の後書きは適当に書いているので読まなくて結構です。
否応無くつまらない物が書けてしまう自分の文才が恐ろしいです。この物語が面白ければこの言葉は謙遜に成り得たでしょうが、そうで無いので言われた側も「せやな」としか言いようがないのです。謙遜が謙遜として聞こえる人が羨ましいです。
おやすみなさい。




