08 操作応答
むき出しのコンクリートで覆われた、建物の中。
回転灯のついた黄色いバーで、通行止めにされた登りの通路。そして、何台もの駐車スペース。
おそらくここは、ビルの地下駐車場の車用出入り口だろう。
それにしても、やけにクリアなVRゲームだ。
リアリティがハンパ無い。
何故だろう。
ゲーム好きのオレでさえ、知らないゲームだ。
コントローラーだけが家庭用のを使ってる、高精細の業務用VRゲームなのかもしれない。
操作キャラクターは、上下黒一色の服装をした若者。
特殊部隊のような、ベストやブーツを身に付けている。
なんか、オレにそっくりだ。
服とかは基本、黒っぽいのばっかりだし。
あんな半そでTシャツは持ってるし、ズボンもこないだ買ったのに似てる。
あのおっさん、オレの写真を見ながらキャラメイクしたんだろうか。
想像するとちょっと笑える。
「コントローラーの操作方法は、右スティックで移動。LボタンとRボタンが左右へのサイドステップ。Aボタンでパンチ、Bボタンでキック。Yボタンがジャンプ。Xボタンがしゃがむ、Sボタンが特殊攻撃で活性化状態でのみ使用可能。Zボタンがその他アクションだ。他は使う必要が無い。活性化については後で説明する。操作法は覚えろ。一度でも死亡したら、当然全てが終わりだ。以上。」
パンチ、キック、ジャンプ、しゃがみ、特殊、LR、Z、っと覚える操作多いな。
っておい、バトルアクションゲームかよ。
そんなバイト面接ってあるの?
しかし、アクションゲームなのにプレイヤーキャラクターの体力表示が無い。
もしかして、一撃死かな。
それか、体力はキャラクターの動作演出とかで判断するタイプ。
珍しいタイプだけど、まぁいいや。
『Zボタン』の、その他アクションってのは、シチュエーションで行動が変るんだろう。
という事は、現実で取れる様な行動はほぼ出来る筈だ。
活性化、というのは全く分からんけど、操作が『Sボタン』ってのは覚えておこう。
あ、ヤベェ、まだ応答してなかった。
「……了解です。山形さん。どうぞ。」
とりあえず、パンチやらキックやらを連続で出して、動作を確かめてみる。
移動は、スティックの傾きで歩いたり走ったりスピード調整をする、よくある操作だ。
サイドステップはスピードがやたらと速く、少しだけ孤を描くように移動するようだ。
回り込んだりするのに使えそうだが、クセのある軌道だった。
Sボタンは、押しても何の反応も無い。
活性化状態、では無いのだろう。
十数秒ほどやってみて、なんとなくどんな動作をするのかがわかった。
「今からは、『応答しろ』と言うまで喋るな。隠密行動だ。今、現場の任務開始地点に到着した、という設定だ。これより適性テスト兼事前演習を始める。」
なんか、緊張する。
「まず、そのまま急いで突き当りまで直進、突き当りまで進め。」
他にもまだ、気になる事はあったが……。
とにかく今は、言われた通りに、走って直進しよ。




