62 マンボウ
「オイ、お前はオレが地獄送る。遺言があるなら聞いてやるぞ。」
この派手男、乳首丸見えのくせに偉そうだな。
普段着で素肌にベストだけって、どんなファッションセンスだよ。
そんなだから、女の子達に禿げの方がずっとマシだと思われてるんだぞ。
そういえば、時間を稼げ、って言われてたっけな。
どうすりゃいいだろ。
もし、スキンヘッドを倒す前に二人の活性化が切れてしまったら、かなり不利になる。
オレも活性化して、手早く勝負を付けるべきだ。
「遺言があるなら聞いてやるって言ってんだよ。最後の願いも、場合によっちゃ叶えてやるぞ。聞こえねぇのか?」
聞こえてるさ。
答える気がないだけだ。
ちゃんと服を着ろ、とか、もっと地味な服にしろ、って言ってやろうかな。
いや、ふざけてる場合じゃない、さっさと終わらせよう。
「マンボウの寄生虫が食べたい。」
あぁ、もっとカッコイイフレーズにしとけば良かった。
しかし、これで活性化が……。
あれ、活性化してないんじゃないか。
たしか、ピピピって鳴ったり、残り時間が表示されたりしたはず。
「お前、今なんつった?マンボウの何だって?」
おかしいぞ、何で活性化しないんだ?
声が小さいのかな。
「マンボウの寄生虫が食べたい!」
オレは叫んだ。
派手男が凄い嫌そうな顔をした。
「マンボウの寄生虫が食べたいって。それが、お前の最後の願いか?」
違うに決まってんだろ。
ヤバイ、何故かナノマシンが活性化しない。
「マンボウの寄生虫が食べたい!」
今度もダメだ。
何でダメなんだよ!
「そりゃお前、無理だぞ。マンボウなんてこんな所にいねぇしさ。マンボウの寄生虫って、そんなに美味いの?」
いや、多分食えねぇよ。
じゃなくて、何で活性化しないんだよ。
スキンヘッドに突き飛ばされた園池さんが、オレの前で止まった。
それを守るようにして、亜衣ちゃんもすぐ近くに来た。
追ってきたスキンヘッドが派手男の横で止まる。
「スマンな依頼人。この女共が結構手強い。こちらの知らない技術を使っているようだ。」
「ちょっと、シュウ。さっさと本気を出しなよ。」
園池さんは焦っている様だ。
そりゃそうだ、彼女達は活性化の残り時間が余り無い。
マジでヤバイ状況だ……。
「マンボウの寄生虫が食べたい!」
ダメだ。
表示が変わらない。
ナノマシンが活性化していない。
「この小僧は、何を言ってんだ?」
「遺言か最後の望みを言え、って言ったんだけどよ。マンボウの寄生虫が食べたい、だってさ。」
スキンヘッドが、気持ち悪そうにオレを見た。
「何だそりゃ。変った好物だな。」
亜衣ちゃんと園池さんまでもが、オレを生暖かい目で見た。
ちょっと待ってくれ、ふざけてた訳じゃないから!
あ、そうだ!
テレパシーで、タマラさんに聞けばもしかして……。
おーいモニカさーん。
……ダメだ、テレパシーってどうやるのかよく分からん。
「マンボウの寄生虫が食べたい!」
「マンボウの寄生虫が食べたい!」
「マンボウの寄生虫が食べたい!」
やっぱダメだ……。
キーワードが間違ってるって事は無いよな。
何か他に、理由がある筈だ。
スキンヘッドと派手男は、完全に危ない人を見る目でオレを見ている。
「水族館にでも行って来いよ。マンボウなんて、魚屋でも売ってねぇから。」
これじゃ、コントだ!




