60 女子高生
チーンという音がして、エレベーターは十階に到着した。
「急ぎましょう。」
亜衣ちゃんを先頭に、エレベーターから降りる。
オレは少し離れて、後ろから着いて行く。
すぐに階段の入り口に着いた。
VRゲームの時と同じように、ドアが開いたまま固定されている。
オレは壁に張り付いて、動きがあるのを待っている事にした。
チャンスがきたら、飛び出して攻撃だ。
一瞬、血塗れで倒れていた男のイメージが頭をよぎる。
ダメだ、思い出すな、思い出しちゃダメだ。
女子二人が、中に入って行く。
「なんの用?今入れないよ。」
多分、ウーロン茶こと茶髪男の声だろう。
わざわざ、二人が居る下まで降りて来ている様だ。
あの野郎、オレの時と随分言葉遣いが違うじゃねぇか。
隙だらけだな。
こりゃ、すぐに行動を起こすだろう。
「えー。結構いい景色が見えるって聞いてたのに。」
「時間空いちゃうよね。お兄さん、なんか一緒に暇つぶししない?」
「え、オレは仕事中だよ。」
「別にここから離れなければいいんでしょ。」
「だよね。三十分位いいじゃん。」
亜衣ちゃん達は、すぐには行動に移らなかった。
おそらく、もう一人も油断して寄って来る事を期待しているのだろう。
「何やってんだよ。オレもちょっと混ぜろ。」
狙い通り、短髪ヒゲの方も階段を降りて来たようだ。
理由は、間違いなくスケベ心だろう。
次の瞬間、ウーロン茶が崩れるように倒れた。
間髪を入れずに、短髪ヒゲも倒れる。
隙を付いて、二人同時にスタンガンを押し付けたのだろう。
男達は二人共、ピクリとも動かない。
なんだそりゃ、拍子抜けだな。
同じ男として、気持ちは分かるが。
いい夢見ろよ。
園池さんが手招きしたので、オレも中に入る。
彼女はオレに向かって、dのように親指を立てた。
思わずオレも、bのように親指を立てる。
なんか、今朝もこんな事があったような。
デジャブだ。
まぁ今日はもう、一日中デジャブみたいなもんだけど。
それにしても、女子高生パワーおそるべしだな。
カワイイが最強、なのかもしれない。
そんな事をしている間に、亜衣ちゃんは屋上のカギを手に入れたようだ。
「この人を上に運んで。ルリちゃんが隠してくれるから。私は予定通りに先に行くね。」
亜衣ちゃんは、階段を登ろうとして立ち止まって振り返った。
「……サイボーグって、ほとんど痛みを感じないんだって。麻痺する事はあるらしいけど。」
そういい残すと、一人で階段を駆け上って行く。
多分、オレの罪悪感を察しての発言だろう。
痛みが無いなら、容赦する必要もないな。
「オレ達も、すぐに行くよ。」
時間を確認すると、九時三十五分ちょうど。
ミニマップ上の赤マークの一つは、まだ他の二つと合流していない。
オレは短髪ヒゲを担いで、階段を登った。
ほとんど重さを感じない。
これも、ナノマシンの効果なのだろうか。
ウーロン茶を運んできた園池さんが、手早く三角形の機械を置いて、二人を隠した。
今、あの機械どこから出したんだろ。
おっと、そんなの考えてる場合じゃないな。
亜衣ちゃんを、一人にはしておけない。
さっさと、屋上に向かわなきゃ。




