54 テレパシー
(こちら、アリサです。エレベーターに乗るまでは地下駐車場の地図、乗ったら屋上の地図表示、という流れでお願いします。モニカさん、どうぞ。)
(了解。ルリちゃんどうぞ。)
(こちら、ルリ。あたしの方は地図を倍位にズームして。階段付近を中心で。モニカさん、どうぞ。)
(了解。シュウ君はちょっと戸惑ってるから、ルリちゃんが先導してあげて。通信も、聞き役に回ってもらいましょう。ルリちゃんどうぞ。)
(こちらルリ。了解。シュウ、あたしが小窓から出る時、スカートの中、覗かないでよ。モニカさん、どうぞ。)
(では、傍受の危険性があるから、通信は最小限で。)
気のせい、なんかじゃないな。
本当に、頭の中でタマラさんの声が聞こえる。
いや、タマラさんの声だけじゃなくて、亜衣ちゃんと園池さんの声も、頭の中で響くように聞こえる。
なんてこったい。
これは、マジでテレパシーってやつだろ。
『こいつ、直接脳内に……。』という状況だ。
あまりの状況に、オレは逆に冷静になった。
テレパシーが可能になる技術なんて、実用化されている筈がない。
それに類するような技術でさえも、聞いた事が無い。
せいぜい脳波を分析して、大雑把な感情を判別する程度の技術があるだけだ。
それに、目の前に表示されるデジタル情報。
これはおそらく、光る微粒子のナノマシンを使って、網膜に直接デジタル情報を投影している。
『ずっと未来の夢の技術』として、その様なものを聞いた事がある。
もちろんそんな技術が、今の段階で実用化されている筈が無い。
ちょっと、整理してみよう。
《時空管》で体験した脳内を覗かれる感じ、転送器のような装置。
そして、VRゲームとあまりにも瓜二つのこの状況。
これらから、導かれる結論。
1、夢を見ている。
2、催眠術にかかって幻覚を見ている。
3、今までのみんなの話は、全て本当だった。
オレには、この三つくらいしか思いつかない。
1の夢オチはともかく、2の幻覚と3はヤバイ。
2の幻覚を見ている、という状態の場合、残念ながらもう手遅れだろう。
幻覚がどうやったら消えるかなんて、知らないし。
オレの脳が、完全にどうにかなってしまったのだ。
元から『ちょっと、どうかな?』、というレベルの機能不全は存在したが……。
ともかく、この場合は考える脳がアウトなんだから、対処方法を考える意味が無い。
という事で……。
3だった場合の対処を考えて、それを採用するのがベストだ。
『今までのみんなの話は、全て本当だった。』とする。
って事はアレだ。
オレはこれから、殺し屋やサイボーグと戦って勝てばいいのだ。
なぁんだ、そんな事でいいのかぁ。
……ってオイ。
十分に手遅れじゃねぇか。
いや、待て。
全てが現実なら、オレ達はナノマシンで強化されてて、すごい戦闘力があるのか。
オレは超強くなっている筈だ。
えー、嘘だろ……。
ありえねぇ。
身体の動きが変ったような感覚もない。
そもそも、この平和な日本でだ、一介の高校生がサイボーグとの戦うなんてのはおかしいし。
まず、なんだろ、対話による平和的な解決とかを図るべきだろ。
例えばだ。
こちらが、彼らの目的の一部を認めてあげるとか。
彼らの望みは、『第三次世界大戦を起こす事』ってわかってる訳だろ。
……論外だな。
でも、オレは《時空管》という片方側の主張しか聞いていない。
もしかしたら、《時空管》の側がオレを騙しているのかもしれないぞ。
向うの主張も聞いてみるべきだ。
……違うか、聞いた所で結局は、どっちを信じるのかって状況になる。
山形さんを信じるか、あのいかにも悪そうな派手な男を信じるか、どちらかって事だ。
情報が少なすぎて、オレには判断がつかないからな。
論理的な結論が出ない場合は、最後の手段として直感で選ぶしかない。
山形さんか、あの派手男か、どちらか……。
……ダメだ。
直感だと、どっちも信用出来ないという結論になる。
じゃあ、他のメンバーで比べるか。
……となると、どう考えても、カワイイ女子とか美人がいる側だよな。
よし、このままのルートで決定!




