53 アシスト情報
確か、九時二十八分まで、このまま警備室で隠れてる予定だ。
まだ、あと五分位はある。
この状態だと、その程度の待ち時間でも長く感じる。
他の警備員とかに発見されたら、やっぱり怒られるんだろうか。
怒られるんだろうな。
隠れようとする女子二人の表情は、真剣そのものだし。
オレ達はすでに、勝手に警備室の中に入ってしまっている。
怒られる理由も十分にある。
警察に捕まる、って事は無いように祈ろう。
山形さんかタマラさんが、このビルのオーナーか誰かに、許可を取ってあるのかもしれないし。
それで、この後は……。
たしか、階段に通じるドアに入るんだったな。
階段付近で隠れて待ってると、あの殺し屋三人組が登場するってわけだ。
オレが適性検査の時、エレベーターで瞬殺した三人組。
パンチ三発、キック二発だったかな。
で、その殺し屋役の三人に、今度はオレ達三人組が不意討ちで……。
いや、ちょっと待った。
いくら新人の手荒い歓迎会っていっても、さすがにそれはマズイだろ。
どうするつもりなんだろ。
(シュウ君、任務に集中しなさい。もう悩んでる時間じゃない。)
また、タマラさんの声が聞こえた気がした。
オレ、緊張しすぎなのかな。
(これより、リレー式通信に切り替え、アシスト情報を表示します。アリサちゃんどうぞ。)
まただ。
また、タマラさんの声が聞こえた気がする。
えぇっ!!
オレの目の前に、デジタル時計等が表示されていた。
つい最近に、見た覚えがある。
これは、アレだ。
アレ。
間違いない、これはVRゲームで見たアシスト情報そのものだ。
ヘッドセットを着けていないのに、視界にゲームで見たような、数字や地図が表示されている。
オレはちょっとしたパニックになり、何度も目をこすり瞬きをした。
それでも、視界から文字が消える事は無かった。
幻覚なのか?
昨日、適性検査でVRゲームをやりすぎて……。
いや、違う。
目の前でVRゴーグルよりもずっとハッキリと表示される動くデジタル時計、数字、ナビのような地図。
これは、多分、網膜に直接投影されている物だ。
こういうのを、『茫然自失』というのだろう。
しばらくの間、オレは声を出せないどころか、本当に頭の中が真っ白になった。
な、何がなんだか……。
一分ほど経っただろうか。
なんとか意識を取り戻して、数回、深呼吸をした。
ちょっとは落ち着いてきた。
それでもやはり、目の前にはゲームで見たアシスト情報が表示され続けている。
これは紛れも無い、現実に起きている現象って事だ。




