41 電車
オレ達三人は電車に乗る為に、駅に向かっている。
午前七時、通勤する人々で結構な混雑だ。
学生が夏休みでも、社会人は普段と変らない。
「なんで毎回電車なんだろ。山形さんが送ってくれればいいのに。」
園池さんは、不満そうだった。
「私が聞いた話だと、『公共の交通機関は、イレギュラーな事態を把握しやすい。』って。」
「えー。でも、山形さんは毎回自分の車で行ってるじゃん。」
「私もそう思ったから聞いたら、『オレがダメなら、どっちにしろダメだ。』って言ってた。」
「アハハ、何それ。あ、現場が観光地ばっかりな理由知ってる?」
「えっ、知らない。そう言われてみれば、観光地ばっかりだね。理由なんてあるの?」
「『迷子はゴメンだからな。』だってさ。」
女子達は、ケラケラと笑っている。
山形さんの物真似が、彼女達の間で流行中なのだろうか。
「今日は、どこに行くの?」
今のオレにとって、最大の疑問をぶつけてみた。
「あ、ごめんね。まだ言ってなかったね。とりあえず、横浜駅まで行きます。現場は駅から歩いて、《みなとみらい》の方に行く途中にある感じ。」
優しい亜衣ちゃん、謝る必要はないぜ。
オレは何度も頷いておいた。
横浜駅とか、《みなとみらい》とか、全然わからんけどね。
まぁスマホもあるし、何とでもなるだろう。
おっと、大事な事を忘れてた。
「あの、オレ佐藤翔。園池さんとはもう自己紹介した。亜衣ちゃんって呼んでいいのかな?」
亜衣ちゃんは、少し顔を赤くした。
名前呼びしたい。
「うん。それでお願いします。」
「亜衣ぃ、ちゃんと自己紹介しなきゃダメでしょ。嵯峨瀬 亜衣です、って。」
園池さんが、少し意地悪そうな口調で言った。
ムスッとした顔で、亜衣ちゃんが答える。
「人の名前を馬鹿にするのは、最低だと思いまーす。」
「馬鹿にはしてないでしょ。愛を探してる、みたいでなんかカッコイイって言ってるだけで。」
「絶対、馬鹿にしてる。」
いやいや、素晴らしい名前ですよ。
オレ、愛を見つけちゃったかもしれない、君という愛を。
こんな台詞、口には出して言えんけど。
「オレ思うんだけど、一応、はぐれた時の連絡先を決めといたほうが良くない?」
これで二人の連絡先が手に入ればラッキーなんだが。
コミュのグループとかに入れてくれんかな。
「そういう時は、《時空管》に連絡を入れる事になってるの。もし電話番号が分からないなら、今のうちに教えておくね。」
う、撃沈か。
「そうなんだ。《時空管》の番号は、面接の為に登録したからいいよ。」




