32 ルーキーの洗礼
「もう分かってるでしょうけど、佐藤君は今日から管理官候補生です。候補生といっても、実際に任務をこなしてもらいます。戦争のない未来へと導く、担い手となりました。候補生の先輩でもある二人から、何か言ってあげて。」
なにぃ!?二人を道連れにするだとぉ?
タマラさん達のフザケ具合に応じて、オレの脳内テンションも『フザケモード』に入った。
「あんまり深く考えずに、変ったバイトだと思ってて。今日の戦闘は、あたしと亜衣でなんとかするから。出来る限りサポートしてくれればいいよ。ま、正直言って、サイボーグと戦うのはしょんどいけど。」
ほぅ。
園池さんも、ゲーム話に乗るのか。
可愛い顔して、ノリノリで初心者をからかう様な『小悪魔系』なんだな。
まぁ、いいけどさ。
オレは別に、そういうの嫌いじゃないしな。
亜衣ちゃんは、見るからに『天使系』だからそういう事はしないだろう。
信じてるよ、亜衣ちゃん。
「タイムマシンは本当にあるんですよ。信じられないだろうけど。」
な・ん・だ・と……。
亜衣ちゃん、君までそんなだとオレは悲しいよ。
やっぱり、天使系と小悪魔系の両方が居てくれた方が……。
「私達には命の危機が迫ってるの。第三次世界大戦っていう、私達じゃどうしようもないものによって。日本人の殆どが死んでしまう。それを、《時空管》の人達は止めようとしてる。だから、私達が命がけで協力するのは、私達の為でもあるの。もちろん、バイト代だってちゃんと出してくれる。」
亜衣ちゃんは真剣な表情も美しい。
さっきの涙も。
もの凄い女優になると思う、こんなに可愛いのに演技が上手い。
嘘吐き?
可愛いから許す。
しかし、みんなしてゲームの話しては脅すってのは、何の意味があるんだろ?
もう、始業時間過ぎてる筈なのに、フザケてる場合じゃないよな……。
あっ!
分かったぞ!
あれだ、『ルーキーの洗礼』だ!
欧米の大学とかメジャーリーグとか、新人が来ると、イタズラみたいな無茶をやるんだよ。
馬鹿な事やって、酷い目に合って、やっと仲間として認められるっていう、儀式みたいなもの。
ここも、そういう伝統がある会社なんだな。
「……でもね、私は人を殺したりはしたくない。例え、戦わなきゃダメなんだとしても。例え、相手がもう助からないと分かっていても。だから、私は改変者を、生かしたまま捕らえたいの。」
亜衣ちゃんの熱演が続いている。
動画撮っておけば良かったな、いや、撮ってるんだったかな。
後でその動画を、スマホに入れて欲しいんだが。
「亜衣、無理だって。この男なんかニヤニヤして、全然信じてない顔してるし。」
ちょと園池さん、オレをノリの悪い男みたいに言わないでくれ。
たしか、ルーキーの洗礼でノリが悪いと、チームに溶け込めないんだよな。
よし、全力で行くぞ!
あの山形さんが企画してるなら舐めちゃいかんけど、気合で乗り切ろう。
パイ投げでもプロレスでも女装でも裸踊りでもSFコントでも、ノリノリでやってやる。
なんでも来い!




