28 教育
「これからあなたは、信じられないような事をたくさん見る事になる。でも、怖がっていたり、深く考えていたりする暇はないの。何故なら、適切な対処をしなければ、あなたは死んでしまうから。そういう状態というのは、人生でよくある事。例えば、交通事故や災害。そういった場合、例え目の前の光景が信じられなくても、必要な行動をすぐに起こさなくてはダメ。」
オレは頷く。
何を言わんとしてるのか、主旨は分からないが。
「もし、交通事故や災害に巻き込まれた場合、逃げる事を第一に考えてしまうと思う。もちろん、自分が助かる事が優先でしょう。でも、佐藤君はまだ若いし、自分で動ける。小さな子やお年寄りが巻き込まれていたら、佐藤君は助ける側にも回るべきなの。救助隊はすぐに来てくれる訳じゃないでしょ。それが求められているのよ。」
まぁ、それはわかる。
オレはまだ未青年だけど、もう助けられるだけの側じゃいけないと思う。
かっこ悪いし。
けど、バイトと何の関係があるんだろ。
「だけど佐藤君は、本格的な救出用の訓練を受けた訳じゃない。」
「きっと、その場になったら簡単には助けられない。極限の状態では、生き残るべき人を見極めなくてはならないの。でも、誰を優先的に助けるべきか、なんていう命の選択にも迷ってしまう。」
「それは、佐藤君自身にとっても、他の人々にとっても良くない事よね。大きな災害に対処する為には、プロフェッショナル以外にも、訓練や教育を施しておく必要があるの。」
人命救助を教えるべきだってのはわかる。
実際、うちの学校でも基本的なことは教えている。
ドイツやフランスでは、水泳の授業でも、人命救助資格を取る位まで教える所もあるらしい。
《時空管》は何でも屋だから、人命救助に関する仕事もやるのかもしれない。
タマラさん医者だし。
そういや、死傷者に関する社外秘とかもあったな。
「と言う事で、佐藤君には、人命を救助する為の知識や技術を身につけて貰う事になりました。もちろん、私達プロフェッショナルがちゃんとサポートする。」
おぉ、やはりな。
しかし、それは想像してたのよりずっと大変そうだな、危険だろうし。
ヤバイバイトっての、あながち間違いじゃなかった。
でもまぁ、やってみよう。
人助けなら、嫌いじゃない。
「わかりました。」
タマラさんは微笑んだ。
全てを見透かしたような、優しい笑みだ。
「適性検査のVRゲームでは、第三次世界大戦を止める為にがんばってもらいました。未来の死傷者を救うという意味では、あぁいうのも人命救助の一環になる訳。そしてそれは、佐藤君自身の命を救う事にも繋がっているの。」
ガクッと来た。
また、あのゲームの話に戻るのか。
まぁあれも、事故現場とかで、冷静な判断が出来るかどうかのテストだったのかもしれないが。




