18 見張り
「悪いな。今こっちは立ち入り禁止だ。」
案の定、見張りの一人が話しかけてきた。
片手を背にしているのは、持っている銃を隠す為だろう。
話しかけてきた方は『短髪ヒゲ』、もう一人は金髪に近い『茶髪』だった。
両方とも警備員のような格好をしているが、明らかにガラが悪い。
ゲーム相手に喋るなんて無意味かもしれないが、試してみよう。
活性化時に声でのフレーズを使うという事は、音声認識ができるという事だから。
「屋上へ行きたいです。」
試しに、反応がありそうな発言をしてみた。
同時に、階段を一段だけ登って止まる。
警戒されないように、出来る限り近付いておきたい。
「今は点検中だから入れねぇよ。午後に来てくれ。」
茶髪から、矛盾しない返答が返ってきた。
なかなか精度の良い音声認識と、優秀なAIの様だ。
「もう、帰らなきゃならないんですよ。」
こんなフレーズはAIに通じないだろうが、有効そうなフレーズがとっさに出なかった。
言いながらもう一段登る、残り五段。
「チッ。ダメだって言ってんだろ。」
舌打ちをして、茶髪が降りてくる、そろそろ限界だな。
あえて降りてきた茶髪の方へと身体を寄せ、出来うる限り、短髪ヒゲ目線の死角に入る。
これだけリアルなゲームなら、キャラの視界設定がある筈だからだ。
茶髪が、オレの肩に触れようとした瞬間。
短髪ヒゲから見えない、という判定になるよう祈りつつ、ボディにパンチ一発。
しゃがむ様に崩れ落ちる茶髪。
一撃で倒せた事を信じて、二段飛ばしで階段を上がる。
上に居た短髪ヒゲが銃口をこちらに向け、二発発砲した。
たぶん、どこかに当たったと思う。
被弾に構わずジャンプして、短髪ヒゲの首筋にハイキックを一閃。
短髪ヒゲは一度ドアにぶつかると、こちらを凝視しながらフラフラと寄ってきたが、途中で止まると、風で揺れるようにふらつき、白目をむいて倒れた。
なかなか凝ってる演出だ。
下の茶髪も、倒れて動けないようだ。
操作キャラの身体を確かめてみると、出血している様子はない。
どうやら、撃たれても大丈夫のようだ。
茶髪が倒れている場所まで降りて、前でZボタンを押す。
操作キャラが所持品をあさる動作をし、どうやら屋上へのカギを手に入れたようだ。
グラフィックはリアルなのに、カギを手に入れた、というようなよくある表示は出ない。
まぁ、見て分かったからいいけど、変なとこが不親切なゲームだな。
もう一度、茶髪の前でZボタンを押すと、転送のアクションが始まった。
上まで登って短髪ヒゲも転送する。
転送完了の表示が出た。
試しに、ドアのカギを開けるためにZボタンを押してみる。
操作キャラが、カギを開ける動作をした。
Zボタン、便利過ぎる。
しかし、ホント変った適性検査だな、楽しいけど。
さて、後は屋上のボス戦を残すのみだ。




