17 階段
上の方から、話し声が聞こえて来た。
「前払いだからマシな方だな。最近はこっちも景気悪くって、どうしようもねぇ。」
「大陸の奴ら、一枚で何でもやるらしいぞ。いっそ何か計画して、あいつら雇った方が良いのかもな。」
「持ち逃げされるのがオチだろ。信用できねぇよ。」
見張り達だろう。
大きな声ではない、リラックスした感じだ。
間違いなく、二人居る。
困ったな、この後はどうすればいい……。
高校生にしか見えないだろうし、いっそ普通に登ってみるか。
多分、ダメだな。
キャラメイクできるゲームで、見た目の効果に期待するべきじゃない。
銃を構えているなら、顔を出した瞬間に終わる可能性もある。
活性化無しでも大丈夫なような事は言ってたが、これじゃ手詰まりだ。
大丈夫だと信じて、今すぐ飛び出すべきか?
いや、都合良く解釈せずに、とりあえず状況が変るのを待とう。
変らないようなら、強行突破だ。
オレは身を屈めて、その場にとどまる事にした。
「佐藤、『ナノマシンによる防御皮膜』がある。多少撃たれても、たいした事じゃない。頭部等の急所を中心に展開されているが、ハンドガン程度で大怪我をする事はないと思っていい。当然、評価にも影響しないから気にするな。」
そういう事ですか。
さっき説明しなかったのは、無謀な行動をするかどうかを見る為だったのかもしれない。
撃たれるのは、気にしないようにしよう。
さて、一気に行くか、それとも一般人のふりをして上って行くか……。
最初は単純に話しかけてきて、屋上に行くのを止めるような気もする。
カギを奪うか、ドアを壊しでもしないかぎり、屋上に入る事はできないのだから。
普通に登って、相手が行動を取るなら攻撃、としよう。
オレは深呼吸をすると、登り始めた。




