12 エレベーター
九時二十五分になった。
三人の敵が乗ったエレベーターが到着するまで、後十八秒。
……後十秒。
ドアのすぐ横に背を向けて立って、思わず深呼吸する。
九、八、七、六、五、四、三、二、一
チーン、という音と共にエレベーターが開いた。
直後、三人共ほぼ同時に出てきた。
オレは張り付いた壁際から振り返り様に、一番近くの鞄を持った男に強烈な右フックを放つ。
そいつはエレベーター奥まで吹っ飛んで、壁にぶち当たって倒れた。
あれだけ『太った男』が、随分と派手に飛んだな。
即座に左右の連続ストレートパンチで、残りの二人を攻撃。
二打とも、的確に二人のアゴにヒットした。
二人が似たような感じでふらつく。
間髪を入れず、二人の腹を押すように前蹴りしてエレベーターの奥に蹴り込んだ。
パンチ三発、キック二発、一瞬の出来事だったな。
三人とも大柄な男だったが、何も出来ずにダウンさせた。
全員、ピクリとも動かない。
オレって、TUEEE!
『坊主頭』の男ってのは、格闘技の経験がある設定だったみたいだが、全然弱かったな。
即座に自分もエレベーター内に入り、操作盤付近でZボタンを押した。
エレベーターの扉が閉まる。
おそらく、あのカップルには気付かれていない。
監視カメラに関しては、もう気にしても仕方が無いだろう。
カメラ類が正常に作動しているなら、エレベーター内の格闘を指示しないはずだ。
もう一度Zボタンを押すと、エレベーターは最上階の十階へ向かって動き出した。
「倒した三人とそいつらの鞄は、そのままって訳にはいかねぇ。転送しろ。」
どうやって、などとは聞かない。
何故なら多分、Zボタンを押すだけだから。
倒れている男の横にしゃがんでZボタンを押すと、操作キャラが何かを男に付ける動作をした。
十数秒後、青白い光と共に男は消えた。
残りの二人と鞄にも同様の作業をすると、同じように光と共に消える。
アシスト情報に『転送完了』と表示された。
三人の男が居た痕跡は、もう何も無い。
「良くやった。ここまでノーミスだな。注意力、判断力、いずれもハイレベルだ。」
たかがゲームでも、褒められるのは嬉しいもんだ。
脳内でのおっさん扱いはやめてやるぞ、山形さん。
「この調子なら合格間違いなしだ。屋上に着いてからは、強敵との戦闘がある。任務達成までの状況や特殊攻撃について等、もう少し詳しく説明しておく。」
ん、よし、気合を入れ直すぞ。




