10 警備室
少し迷ったが、受付用の小窓から警備室の中に入る事にした。
警備室の正面側にある小窓が、良さそうに思える。
もし小窓から中に入るのなら、正面の方なら簡単に入れそうだからだ。
向かって右のエレベーター側にも小窓があるが、大きさが少し小さい。
エレベーター側からだと、うつぶせでギリギリという感じだ。
監視カメラの位置はまだ分からない。
しかし、誰かが警備室のドアにあんな罠を仕掛けたのだから、正面方向は写らない筈だ。
常に警備員がいるはずの場所だからこそ、誰もいない場合はカメラの盲点になり得る。
正面小窓をざっと調べてみるが、ワイヤーなどの罠のようなものは見当たらない。
プロではないので、確実に罠がないとは言い切れないが、おそらくは何もなだろう。
これ以上は、調べても無駄だ。
あとは、行動あるのみ。
小窓の前でZボタンを押すと、サッシ窓が開いた。
やはり、窓やドアなどの開け閉めはZボタンだったようだ。
もう一度Zボタンを押しても、ドアが閉まるだけだと予想。
試しにジャンプ操作をしてみると、飛び込むようにして小窓から中に入る事ができた。
中に、人の姿は無い。
ゲームでこういう状態になった場合、死体等が隠されている場所はあらかた決まっている。
置いてある2つのロッカーを注意深く観察、おかしなところは無い。
しかし、直立した状態なら、大人の男でも十分に中に隠せる大きさだ。
耳を付けて中の音を聞いてみる。
呼吸音が聞こえるような気がした。
罠はなさそうだったので、思い切ってロッカーを開ける。
居た。
猿ぐつわ、とかいうのをされ、全身を縛られている。
どこかで、見たことがあるような顔だ。
眠っているのか、意識はないようだが、生きてはいるようだ。
警備員である以上は、警備会社か本部への定期的な報告が義務付けられている筈。
騒ぎになっていないのだから、こういう状態になって、まだ数分位しか経っていないだろう。
それだけ確認できれば次だ。
警備員の救出、という指示は出ていない。
『まだ息があるなら、警備室ドア正面にある車の陰に隠れろ』という指示を優先。
下手に動かすと良くないと思った、という言い訳で対処する事にして、救出はしない。
出来る限り行動の痕跡を残さないようにしておくのが、こういうゲームのセオリーだ。
念の為にロッカーを閉め直す。
もう一度受付け小窓に飛びつき、駐車場に出る。
小窓のサッシも元の状態に戻しておいた。
出てすぐに、ドアの前の駐車スペースにあるワゴンの近くで、隠れるようにしゃがむ。
しゃがむ場所は、エレベーターと通路から、死角になる部分を選んだ。
「上出来だ、佐藤。」
少し驚いたようなおっさんの声。
オレ、こういうのは得意なんだよ。
しかし、こんなんでバイトの適正なんてのが、わかるもんなのかなぁ。




