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元囚人ジャン・ヴァルジャンがいかにして市長マドレーヌさんになったか

 ええ、私がミリエル司祭に助けていただいて、数年したころです。モントルイュ・スュール・メールという町に立ち寄ったら、すごい大火事がありましてね。聞くと、中にまだ子供がいるというじゃないですか。とっさに中に飛び込んで助けたんです。そうすると、たまたまそこの家が憲兵隊長の家だったそうで、そういうわけで私の黄色い通行券、この呪いは、見られずに済んだ、ということですね。

 この町には黒ガラスで儀式用の玉を作る、という特殊な産業があったのですが、私はそれにうまい改良を施すのに成功しました。樹脂の代わりに漆を用い、はんだ付けをやめてはめ込み式にし......まあ、漆を使うときは労働者がかぶれない様に十分注意してやらないといけないんですが。細かい話はいいでしょう、とにかくこれが素晴らしくコストカットにつながった。そうして質が良くなり買う人が得して、コストが浮いた分は賃金に回して、そしてそれでも余ったものは、私がいただき、これで三方一両得というわけです。

 すると神のご加護か、するするとうまくいきまして、二年目にはもう、ロンドンやベルリンなどと同じぐらいには栄えるといった様で、男女別の工場を建てることができるようになりました。え?なんで男女別かと?この町には兵営がありまして、随分と風紀が乱れておりますので。男女を一緒にすると、風紀の乱れに輪をかけるでしょう。

 私は労働者に、一つのことしか要求しません。正直たれ!清楚たれ!...二つでした。

 ともかく、ミリエル司祭に助けていただき善の道を歩くと決めたからには、慈善を行わなければなりません。町に病院を建て、学校を二つ、つまり男と女を分けて立て、ええ、これも風紀のためです。あとは薬屋なども立てたでしょうか。

 そうして私は困窮する財布をなくしました。すべての人は、私の工場にきて働けば、パンが得られないということはありません。スペインからは多くの注文が毎年やってきました。そうして時には農作業のコツを教えたり、時には施したりして、日々を過ごしていると、何やら何とかの賞だの市長への推薦だのがやってきました。私は自分を......そのようなことに値する人物だとは思っていなかったので、二回は辞退したのですが、国王陛下からの命令が三度目ともなるといかんともしがたく、ついにはお受けさせていただくことになった次第です。

 ええ、これが、元囚人が尊敬さる市長になった次第でございます。


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