第五話ッッ!!!無量に咲かせ!無常の華!!!
その男は黒幕のオーラと言うか…、とにかく全体的に黒い男だった。スーツはもちろんワイシャツからグローブまで真っ黒だし、前髪ぱっつんな長髪も黒い。…ってか葬式ってレベルじゃない。
彼は"無量院無耶"。…後で聞いた話だが、淫夢という蔑称で呼ばれる彼はアルテルメア曰く巷ではかなり有名な"剣属"だそうだ。かつては世界で俺一人しか存在しなかった"剣属"だが、俺の『過去を穿つ聖弾頭』によっていくつかの過去が改変され、新たに何人かの人間が俺と同じく"ヌクレオステルン"を克服した事により、結果的に彼らも"剣属"の力を手に入れたのだという。
彼の言論によって確定した改変箇所は大きく分けて二つ。まずは数年前にこの都市を襲った大災害の事。そして俺の実の妹が何者かによって殺されている事。
…そう。俺の妹は死んだんだ。俺が今までに幾度と無く殺してきた妹の…。最初の一人がたった今死んだ。涙一つ流さない俺に、彼は「仕方ないさ」と呟く。続けて彼は言う。
「…だが、彼女の"『人類最後の悲劇』"は恐ろしい天成剣だった。何せ相手の人格や仕草、天成剣までも完全にコピーしてしまうんだからね。」
そう言うと無量院は拳銃をホルスターに納め、無造作に髪を梳く。…俺の妹の天成剣が恐ろしいだと?あんなにも優しい剣のどこを恐れる必要があるんだ?俺にはコイツの考えがさっぱり理解できない。
俺がコイツを横目でじっと観察していると、彼はため息混じりに言葉を続ける。
「でも、これでようやく仇を取る事が出来た。」
「仇…?」
「あぁそうさ。彼女は僕の妹の仇だ。」
…はい?
無量院はどうして俺の妹が仇扱いされているのか詳しく説明してくれた。彼が言うには数年前、大災害を引き起こしたのは俺の妹の仕業なのだそうだ、…だがそんなはずはない。あれを招いたのは間違いなくこの俺自身だ。
勝手な思い過ごしで実の妹を殺された俺は、証拠を見せる為に再び『果てなく啓けし万理』を呼び出そうとするが…。
「…クソッ!!! どうして出ないんだ!!」
出ない。便秘かな。
「安心してくれ。全ては君の妹が独断で招いた事態。…君が罪を背負う必要はないよ。」
無量院は俺の肩に手を置く。
「ふざけるな…!彼女は某の妹と同じ…!○歳だぞ!?」
アルテルメアが俺の代わりに叫ぶ。すると無量院はおれに背中を向け、瓦礫の都市を見渡す。
「見えるかい?この無秩序な世界が。」
アルテルメアは見ない。そして動じない。彼女はただ一心に掌を突き出し…。
…ってか普通にコンビニやってるんですけど。
「無量院ッ!!貴様には某が直々に引導を渡すッッ!!!『霊勁』ッ!!!」
彼女の勁は霊魂を貫く一手。ただし効果が発揮されるのは死者を相手にした時のみ。生身の人間に打つ場合はもっぱら突き飛ばし用の技でしかない。
「っ…!!!!」
しかしアルテルメアの腕は無量院に触れる寸前にして亜空間へと根こそぎ引き込まれた。さすがは黒幕オーラを醸し出しているだけはある。
「…某と互角で渡り合うか、面白い。」
いや互角じゃないから。腕一本もってかれてるから。
俺はコンビニで買って来たアイスを食いながら二人の戦いぶりを観賞していると、遠方から突然妹達が10000000人ぐらい押し寄せてきた。
「おにいちゃ~~~ん!!」x10000000
「うおっ!?何だこの量!?キモッ!!?」
妹は俺たちの居る場所の四方八方を塞ぎ、さらには上空や地中からもやってきた。ようやく異変に気づいたアルテルメアと無量院でもこの量をどうにかするのは難しいだろう。
「さてどうする…?」
「僕を誰だと思っているんだい?地上最強の"剣属"と言えばこの僕の事じゃないか。」
なんかいつのまにか二人はお互いに背中を預ける仲になってる訳だけど。とりあえず無量院は待ってましたと言わんばかりに自分から天成剣を鍛造してみせた。
「そそり立て黒百合の塔!貫け華の摩天楼ッ!!『黒百合姫』ッ!!!」
すると無量院の足元の地面が突然隆起しはじめ、次第にそれが柱のように高く伸び上がっていく。
「おにいt…………はっ!!」
塔が頂点に達すると、やがて妹達の様子に変化が表れる。
「待たせたね。これが君達に捧げるささやかな贈り物だ。」
立った立った!塔が立った!!小田原の炭俵の桟俵に黒百合の塔が立った!!!
次回ッ!!第六話ッッ!!! …妹よ!俺の望みの喜びよ!!!