第三話ッッ!!!偏在せよ!可塑の剣!!!
俺は最後の妹の心臓を貫こうとする。
剣を突き立て、今まさにトドメを刺そうとした瞬間…。俺の身体はいつのまにか宙を舞っていた。
「…がはッ…!!」
一瞬の出来事だった。俺の剣は妹に触れる寸前で静止し、妹は倒れている地面ごと根こそぎ俺から離れていく…。いや、違う。妹が離れてるんじゃない。俺が吹き飛ばされているんだ。それにこれは妹の能力なんかじゃない。間違いなくアイツの…能力だ。
「お…い……!!」
「……!!!」
…アルテルメアは先ほどまでの冷静さを失っていた。彼女は手を伸ばし、俺を吹き飛ばした時の姿勢のまま、まるで自分の体が誤作動を起こしてしまったかのような動揺を見せている。
「何…してんだよ…!!!まさか操られちまったんじゃねーだろうな…!?」
アルテルメアは答えない。だが、彼女の視線の先にいる妹は…俺の知っている妹とは違う全くの別人に変わっていた。
「アンセル…メア。お前…なんだろう…?」
「そうだよ…おねえちゃん。」
「生きて…いたのだな……。」
アンセルメアと呼ばれた少女には確かにアルテルメアと良く似た角や尻尾が生えている。一目見れば誰もが二人が姉妹であると確信するだろう。だが、やはりおかしい。俺が殺そうとしていた彼女はつい先ほどまで間違いなく俺の妹だったはずだ。
だとすれば。
「…アルテルメア。そいつはお前の妹なんかじゃない。」
俺の妹が変身した。…それだけの事だろう。
「…はっ、何を根拠に。」
「お前こそソイツが本当に自分の妹だという根拠はあるのか?」
「……某は。」
しばらくして彼女は自分の全てを話してくれた。
彼女の言う妹のアンセルメアは、"世界最初のヌクレオステルン感染者"だという事。そして妹と共にヌクレオステルンに感染した彼女に施された延命処置の事を。
ヌクレオステルンは人の身体を破壊し、やがてその全てを剣に書き換える。これまでにも幾度と無く発症を抑える研究が続けられてきたが、一度発症してしまえばもうどうする事も不可能だった。…だが彼女に施された延命処置は違う。彼女に施された処置は、ヌクレオステルンの再構築をさらに推進するものであった。
…普通に考えれてみれば死期が早まるだけで何のメリットもあるはずの無い、誰もが無意味と確信するであろう行為。…だが、それでも彼女は生きてここに居る。
第196517836天成。アルテルメア。延命処置を受けた彼女は、『人』ではなく『剣』としてこの世界のこの場所に存在していた。…そして俺の能力。『天成』にはこの星に存在するありとあらゆる剣を呼び覚ます力がある。
…全てはこの時の為に繋がっていたのだろうか。
永遠の眠りについていた彼女を最初に目覚めさせたのは。この俺自身だった。
アルテルメアは再び口を開く。
「…もしもの話だ。もしも妹の姿に変化した人間を…、元の姿に戻す事が出来るとしたら。…その力がマスター、貴方の手に本当にあったとしたら。…いいや、あると言ってくれ。彼女を本来の姿に戻したと言ってくれ…。そうでなければ某は…。」
アルテルメアは妹を抱き抱えたまま離さない。俺は彼女にどうしてやる事も出来ないのか。ソイツの正体を明かす能力も無ければ、妹になった人間を元に戻す能力なんてのも俺にはない。それに、星の数ほど存在する剣の中から人間として死んだのか剣として死んだのかも分からないたった一人の妹を探し出す時間なんて…俺の人生だけでは到底足りえない。
──何が『望む未来を掴み取る力』だ。望みもしない運命を掴み取ってばかりで、本命の運命には一歩たりとも届いちゃいない。こんな力で何が出来るって言うんだ。
「出来るよ。」
それは突然に起こった。俺が撮影スタジオと思い込んでいた空間は突然裏返り、内向きに閉じていた空間は外向きへと開放された。
何も無い空に広がる無数の星はその全てが剣。まるで天の川のように連なるそれらの剣は何億という途方も無い時間をかけて一つの超弩級の剣を鍛造する。
「可塑自在の…天成剣。」
銀河一つに匹敵する、ぜんまい仕掛けの巨人の手が超弩級の剣の柄を握る。
…そう。俺が呼び出したのは『空間』じゃない。
『空間以外の全て』…だ。
ついに明かされたゼネラル・オーバークロックワークスの本体!!天元突破してる巨人はそのバカでかい剣を以って彼女らに何を成すのか!?
次回ッ!!第四話ッッ!!! …お兄ちゃんには秘密だよ!!!