第一話ッッ!!!研ぎ澄ませ!心の刃!!!
──数年前、ある少女が原因不明の奇病によって命を落とした。
『ヌクレオステルン』と呼ばれるその奇病は、全身から剣のような金属片が生え、やがて人を死に至らしめる。発症の原因は分からず、治療法も分からない。だが数年前に引き起こされた異常な現象はそれに留まらなかった。奇病が発見されたのと丁度同じ頃、ある男が首吊り自殺を図った。しかし彼の自殺は未遂で終わり、一命を取り留めた彼はある異変に気づく。
そう。──その日人類は『永遠の命』を手に入れたのだ。
首をはねようと、心臓を貫こうと、細切れの肉片にしようと、その肉片一つ一つが再び元の場所に集まり『俺の妹』の形になる。
俺の妹に実害はない。けれど死ぬ人間全てが妹の姿に変化するこの世界で、俺のことを『お兄ちゃん』と呼びながら集団で襲い掛かってくるあの光景はおぞましいものだ。
俺は今、誰も住んでいないアパートの一室で篭城をしている。(神様も居るけど)
今日でもう三日目。埃っぽいカーテンを開いて外を眺めればどこもかしこも俺の妹ばかりだ。
「おにいちゃぁ〜〜ん!!!」ドンドンドコドコ
外からドアをノックする音が聞こえる。あの聞き覚えのある声もする。どうやら妹達が俺の居場所を嗅ぎ付けてきやがったらしい。
「…どうやって逃げればいいんだよ!神様!!」
俺は一緒に逃げてきたご近所の神様に策が無いか尋ねる。
「大丈夫です。安心してください。神様ですよ。」
ダメだ。コイツさっきから同じことしか言ってない。
そして突然の爆発!!!!無残にも吹っ飛ばされたドアの先には銃で武装した妹隊(精鋭)がいる。
「おにいちゃぁ~~~~~ん♪♪みいぃ~~~つけたぁ~~♪♪♪」
「おにいちゃーーん!!一緒にごまドレッシング飲もうよっ!ねっ?」
どうしてこんな事になったのだろう。ヤンデレの一種なのか?いいやありえない。この妹達は間違いなく俺を殺そうとしている。もし殺されなかったにしても妹達に捕まった先の未来は考えたくない。
「畜生!!俺はこんな所で死ぬわけにはいかねえんだよ!!!」
俺は立ち上がった!こうなりゃ俺の『剣』を使うしかない!
「遍く星の剣属よ…わが神託の元に集え!!──『天成剣鍛造』アプトフォージ!!!!」
──数年前、『ヌクレオステルン』を発症していながらただ一人だけ生存出来た人間がいる。
そいつの名は"自然淘汰郎" …この俺自身だ。全身が剣化する奇病を克服した俺は、その恩恵としてとある能力を手に入れた。
能力の名は『天成剣鍛造』。何もない空間から『天成剣』と呼ばれる剣を鍛造する能力。そしてこの剣によって殺された人間は──死ぬ。妹として蘇ることもなく、例外なくすべてが死ぬ。…妹達を、人間達を正しい死に誘う事が出来るのはこの世にこの俺一人だけだ。
「さあ!かかって───」
だが、俺の視界が突然霞む。意識が遠退いていく。これは───。
「何も自分だけが特別だとは思わない事だね。お兄ちゃん。」
妹達だ。妹達が俺の心臓を…。
「病を克服した人間はお兄ちゃん一人だけかもしれないけど、病を克服した私ならここにいるよ。」
「ここに、いるよ?」
「たくさん、いるんだよ?」
…妹達の血塗られた手には、まるで兄弟と言わんばかりに俺とそっくりな天成剣が握られていた。
「こんな、所で……。」
こんな所で。こんなどこだか分からないような場所で。名前も知らない神様の隣で。名前も知らない妹に理由もなく殺されていいはずが無い。
──俺は願った。無限に生まれてくる妹を殺す為に、最強の力が欲しいと。永遠に終わらないバースデーを終わらせる為の能力が欲しいと。
「…欲しい。」
欲しい。欲しい。ほしい。ほしい。ほしい。ほしい。。。
薄れゆく意識の中、俺はぼんやりと浮かぶ何かを必死で掴み取ろうとしている。
「大丈夫です。安心してください。」
──隣の神は言った、『望む未来を与える代わりに、代償として魂を支払え』と。俺は迷うことなく友達の魂を払った。だってアイツはもう妹になってたし。とりあえず俺は一番安いプランでお願いした。
「死んじゃった?」
「殺しちゃった?」
妹達が俺の周りを囲んでいる。串刺しにされた体はぴくりとも動かない。けれど、俺の心臓は間違いなく動いている。まるで剣先がほんの数ミリ手前で止まっているかのように、寸前の所で俺の身体は機能している。
「契約は完了しました。さあ呼び覚ましなさい。望む未来を掴み取る力を。」
俺は目を見開いた。
───呼び覚ます為の言葉は既に知っている。
天成剣鍛造ーーーッ!!!
「────来いッ!! 『果てなく啓けし万理』ゼネラル・オーバークロックワークスッッ!!!」
淘汰郎はなんかカッコイイ技名を叫んだ!!彼の"望む未来をつかみ取る力"はいったい何なのか!?そして魂を売られた友達の運命やいかに!!
次回ッ!!第二話ッッ!!! …白龍!アルテルメア!!!