バーカ
「バーカ」彼女は言った。
「バーカ」ぼくも同じように返す。
それがぼくたちの合図、みたいなものだった。
初めて話したときも
「君、バカだね」彼女はぼくのテストの成績を見ながら言う。確かに後から数えたほうが、断然早い順位だ。
「そういう君だって、バカじゃん」彼女はそんなぼくよりもひどかった。
「うるさいなぁ」
そういって君は顔をしかめた。
どれだけ勉強しても、ぼくの成績は上がらないようだった。それは彼女も同じのようで、ぼくたちが一緒に帰るようになったのは、自然の成り行きだったのかもしれない。
「バーカ」いつものようにぼくは言う。
でも、返事はなかった。
「私、大学行くから。もう、バカなんて呼ばせないから」
彼女は本気だった。
「そう、頑張って」そう言うのが精一杯だった。
バカは一人になった。
特に変わったことはない。
ただ、隣に君が居ないだけ。
君は、何をしているだろう。
「バーカ」
ぼくは自分にそう言い聞かせた。彼女の分まで。