闇子のヤンデレ
温いホラー短編です。バレンタインデー間近なので、友人と10分でどのくらい書けるか競って作ってみました。
携帯電話の目覚ましがなる。俺は腕を伸ばして携帯電話の目覚ましを止めた。
今日はバレンタインデーだ、と俺は鼻を膨らませた。
学校ではそれなりにモテる。運動もできれば勉強もそこそこ。クラスのひょうきん者でもある俺は学期末試験を控えてなお、それを気に病むこともなかった。ただただ楽しみなのだ。
「みっちゃ~ん、起きたの~?」
階下から妹の声がする。起きたよ、という壁ドンのサインをして俺は制服に着替えた。
朝食はトーストと目玉焼きとベーコン。両親が旅行中でいない。妹が作ってくれたのだろう?
「みっちゃん今日はチョコ何個もらうのかな?」
妹が言う。
「んなもんもらえねーよ」
「ホント?」
妹が目を輝かせて言う。俺から見ても大いにブラコンだが、そこがまた可愛かった。
「信じてるからね!」
兄のモテないっぷりを信じるのもどうかと思うが。
朝食にレタスないのかよ、と突っ込んだら、包丁怖くて持てない。とか抜かす。むしればいいだろ、と言う。
授業を終え、俺は教室を後にした。
部活の後輩や同級生からチョコをもらい俺としても大満足だった。
ただ、長差なじみの闇子からはもらえなかったのが少し残念だった。
校門にさしかかるとその闇子が待っていた。
「ずいぶんモテてるみたいね」
「まあね」
「ムカつく」
「なんでだよ」
闇子は少し狂気をにじませて不機嫌だ。
「死ねばいいのに」
「うわ怖」
「女の子なかせたらいつか殺してやるから」
「だからなんでそんな不機嫌なんだよ」
「……はい」
闇子は小さな手をめいっぱい伸ばす。握られていたのは包装が綺麗な箱だ。
「何コレ」
「うっさい、また明日ね」
闇子がチョコをくれるなんて! 期待はしていたけど結構嬉しいモノだ。
浮き足だって俺は帰宅する。
「ただいま」
「おか……」
帰ると妹がもう帰っていたようで、エプロン姿だ。包丁も持てないくせに。
「誰からチョコもらったの?」
「あぁ、闇子とクラスと部活の子にな」
「ふ~ん、良かったじゃん! 料理作るから早く着替えなよ」
「おう」
俺は自分の部屋に向かう。
「お兄ちゃん」
控えめなノックとともに妹の声。
「着替えたよ入って良いぞ」
「うん」
ドアが開く。ぎょっとした。
妹がうつろな目をして立っていた。
「おまえ……」
「お兄ちゃんチョコもらわないって入ってたよね? わたしはやくかえってチョコ作ってたのにお兄ちゃんの」
「あ、ありが」
「でも!」
妹が叫ぶ。
「お兄ちゃんは私を裏切った!!死んじゃえ!!」
妹は今朝もてないと言っていた包丁を手に俺を目がけて-
闇子さんがヤンデレと見せかけて妹でしたっていうしょうもないオチでした。お目汚し失礼いたしました。にゃー。