表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナチュラル  作者: 犬兎
42/45

最終話 由真、恋するココロ? ②


 そのころ、麻衣は家で祐一と話をしていた。


「で?由真さんに渡せたの?プレゼント。」


「・・・無理だった。」


 祐一はそれを聞いて溜息をつく。


「な、なに?そんなにいけなかった?」


「悪いわけじゃないけどさ。まぁ、明日渡せばいいわけだし。」


 そう言い、壁の時計を見る。時刻は八時。


「あのさ、麻衣姉。その、今日のことなんだけどさ。」


「うん?なに?」


「都に聞いたよ。俺のために色々してくれてたって。」


「あ、だってそれは・・・。」


「いいって言ったのに。どうせもう学費払えないんだから。」


 先日、祐一はバイトを辞めた。そのせいでもう学費が払えなくなっていたのだ。


「麻衣姉、この部屋ももう家賃払えないからさ・・・。」


「うん・・・お父さんの家、帰ろ?」


 そう言うと、祐一は首を横に振った。


「麻衣姉は由真さんの家に行って欲しいんだ。」


「えっ!?」


「美鈴先輩達なら安心だし。それに・・・親父の所に・・・もう戻れないだろ?」


「・・・・・・・・。」


 麻衣は何も言えなかった。


「親父は俺がどうにかするからさ・・・だから。」


「うん・・・。」


 麻衣は静かに頷いた。


「麻衣姉・・・ありがとう。」


「でも、寂しいな・・・今までずっと祐一がいてくれたのに急にいなくなるのは・・・。」


 麻衣がそう漏らすと、祐一は寂しげに床を見つめる。


「麻衣姉、あのさ・・・。俺、まだ諦めたわけじゃないから・・・。」


「・・・都さんの事?」


「いや、麻衣姉のこと。」


「・・・・・・・・。」


 時計の音だけ、虚しく聞こえる。


「俺は麻衣姉のことが好きだ。それに嘘偽りはない。」


「・・・・冗談。祐一にはたくさんいるのに。」


「本気なんだ。俺が本当に好きなのは、麻衣姉、ただ一人なんだ。」


 手を握る。真剣な祐一の表情。


「・・・だって、私には・・・・。私には・・・。」


「・・・・・って言えば、麻衣姉がちょっと悩むかな~?ってさ。」


 祐一の言葉に疑問符な麻衣。


「麻衣姉はやっぱ由真さんの所に行くのがいい。」


「え?え?どういうこと?」


「冗談だったって事さ。俺は麻衣姉の事、一人の女として見た事ないから」


 それを聞いた途端、ふるふると怒りに震える麻衣。


「やべ・・・怒った?」


「もう!知らない!」





 そうしているうちに夜も更けて、時刻は十二時を回った。


「はぁ~楽しかった・・・。」


「十分に生を謳歌できた?由真君?」


 まるでこれから俺を血祭りに上げるような言い様だ。


「美鈴、明日さ・・・。」


「ん?」


「麻衣、家に連れてくるから・・・。」


「なんで?そんなに誕生日のプレゼント貰えなかったのが悔しいの?」


 冗談交じりに茶化す美鈴。


「そうじゃない。・・・実は明日、麻衣に・・・・。」


「いよいよなんだ。・・・いいねぇ、青春ですなぁ。」


 そう言いながら糸目になって色々思い返している。


「長かったね・・・麻衣も待ちくたびれたんじゃない?」


「そうかな?でも、やっぱ友達だし・・・。」


 俺のその言葉に美鈴が反応する。


「でも、いつまでも友達じゃいられないでしょ?だからがんばって!ね?」


「ああ、がんばってみるよ。」


 俺のその言葉に笑顔になる美鈴。しかし俺は気付いていた。その後見せた彼女の悲しげな顔に・・・。

 部屋に戻る。そして学祭の夜のことを思い返す。


『由真君、私ね・・・。由真君の事・・・ずっとずっと昔から好きだった。』


 あれは冗談ではなかったのだろう。彼女はあくまで本気だったのだ。


「・・・どうやら自意識過剰じゃなかったみたいだな。」


 俺は悩んでいた。美鈴と麻衣・・・。俺はどちらの悲しむ顔も見たくない。


「・・・あ~もう・・・・いつから俺は悩み多き高校生になったんだ?」


 間違いなくつい先日までは、俺はただの高校生だった。だが、いつのまにやらラブコメの王道街道を突っ走っている。俺には決断する能力なんてなかった。


「麻衣・・・美鈴・・・・。」


 そうしているうちに夜が明けた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ