第一話 由真、恋の三角関係警報発令中! ②
本の整理も終わり、彼女はふうっと一息ついて、帰り支度を始める。現在時刻午後七時。辺りはもうすでに真っ暗だ。暗い夜道は女の子にとって危険なものだ。これは一緒に帰るためのチャンス!
「・・・小野寺さん、一緒に帰らない?」
俺は重そうな鞄を持った彼女にそう尋ねた。
「・・・ううん、私の家・・・遠いから。」
彼女はそう言って、ドアの方に歩き出す。しかしドアの前まで来た時、彼女は突然振り返り、微笑みながら、
「・・・でも・・・・気持ちだけ・・・ありがとう。」
そう言って、図書室から出て行った。俺は顔を赤くして、いろいろな事を考えていた・・・。いろいろな事とは当然小野寺さんの事である。帰り道でも小野寺さんの事ばかり考えていた。だって俺は健全な男子高校生だからな。だが妄想に浸る俺はかなり怪しい表情をしていたのだろう、すれ違う人がみんな俺と目線をあわせようとしない。でもあくまで如何わしい想像はしていない。そんなこんなで家に辿り着く。
「ただいまー。」
俺はとりあえず一直線に自分の部屋に向かった。しかし二階への階段を上がるとき、俺のいとこの高野さやかが声を掛けてくる。
「ゆーちんも隅に置けないよな。」
さやかはニヤニヤしながら近付いてくる。俺はその顔にデコピンをお見舞いする。
「いた~。何すんだよバカ!」
「お前がふざけたこと言ってるからだろうが!・・・でどこから見てたんだ? パラッチ女め。」
さやかは無い胸を張りながらケータイの画像を見せた。その写真は俺と小野寺さんが楽しそうに話をしているところを捉えていた。恋人同士に見えなくも無い。
「委員長先輩とラヴい関係になりつつあるゆーちんであった、と。」
「お前、まさか一部始終見てたのか?」
不敵な笑いを浮かべ、さやかは頷いた。
「明日学校で先輩たちに見せびらかしてやる。」
そう言って、さやかは自分の部屋に逃げるように戻った。
「ちくしょー・・・アイツめ・・・・明日覚えてろよ・・・・・・。」
そう呟き、俺は部屋に戻り着替えを済ませ一階に降りた。俺の両親は共働きでいつも帰りが遅かった、その上つい先日海外に赴任することになったためもうこの家にはいない。当然リビングには人の気配などは無い。とりあえず電気をつけ、ソファーに腰掛ける。
「はぁ・・・。」
「お疲れモードかな?」
ソファーの後ろから声が聞こえる。・・・そうだった、俺の家の場合、先程言った『人の気配が無い』を『人の気配は無いが、人の気配を消せる人間が我が家にいるので無人かどうかは分からない』と言った方が正しいということを忘れていた。このソファーの後ろから現れた人はさやかの姉、高野美鈴。ちなみに俺の同級生でもある。前述のただ一人を除いてという言葉はこの人に適用していただきたい。
「・・・いつからいたの?」
「二時間くらい前からかな。」
さすが美鈴さん・・・・普通の人とは違う。
「あ、あのさ・・・美鈴さん。」
俺がさやかの話をしようとすると、美鈴さんの顔が一気に近付く。
「家で美鈴『さん』はやめてっていたじゃない・・・もう忘れたの? 学校でそう呼んでるから癖がつくんだよ。これからは学校でも呼び捨てにしなよ? ね?」
美鈴さんの吐息がかかる距離・・・俺は一瞬理性を失いかけるが、なんとかそれに耐え、彼女の肩を抑えて距離を取らせた。
「わ、分かったから・・・美鈴。」
「ん、よし・・・。で? 話はなに?」
美鈴が頷いた後、テレビをつけ、リモコンを手に持ちつつそう聞いてくる。
「さやかの取った写真・・・見た?」
「うん・・・・見たけど。あれって別に何も無かったんでしょ?」
そう言いながら、適当にチャンネルを変えながら面白い番組がやってないかチェックして、その後新聞のテレビ欄を見る。・・・順序が逆だろ普通・・・・。
「大丈夫だよ。さやかが見せに来ても私が何とかしておくから。」
「すいません。」
俺が礼を言うと、美鈴はまた顔を近づける。
「でさ・・・お姉さんだけにホントの事教えてくれないかな? 実際どこまで言ったの・・・委員長と?」
「な、何もしてないよ! 美鈴まで俺の事バカにするのか!」
俺が怒りながらそう怒鳴ると、美鈴は笑いながら手をぱたぱた振る。
「あははは・・・冗談冗談。でも、そうなってもらうと私としても楽でいいんだけどな~。」
美鈴の言葉から何か引っかかる言葉が出た。俺はそれを追及する。
「楽って何だよ?」
「あっ・・・いや、なんでもないよ。うん、ホントに・・・。」
予想どおりの反応。美鈴は明らかに何か隠している。
「なんかあるんだろ?」
「あはは、何にもないない。あっお風呂入んなきゃ、じゃあ後でね。」
「あっおい!待てよ!」
「あははー待たないも~ん」
さすがに風呂場まで追いかけるわけにも行かず、結局その話題はうやむやにされた。




