第三話 美鈴、私の悪魔さん ③
次の日の朝、私は思いっきり寝坊をした。私が起きたときにはもうすでにお日様が顔を出していた、現在時刻六時半。
「ふぁ・・・おはよう。」
私は悪びれた様子もなく、リビングに向かう。麻衣とさやかはもう朝食を食べ始めていた。
「由真君は?」
「まだ起きてこないよ? 寝坊かな?」
麻衣がそう言ったので、私はそれを起こしに行くことにした。
「じゃあ、行ってくるから。お弁当よろしくね~。」
だらだらと階段を上る私を見て、二人が心配そうにお互いの顔を見合わせていた。
部屋に行くと由真君は本当に寝ていた。
「由真君~朝だよ。」
しかし起きない。揺さぶっても、叩いても、つねっても、まったく微動だにしなかった。
「・・・さやかのあれやっても別にいいけど、さすがにモラルに反するかなぁ?」
腕組をし、じっと由真君の顔を見詰める。
不意に私の悪魔さんが復活した。・・・入れ知恵され、私は悪魔君の言うとおりに行動する。
「・・・起きないとキスしちゃうよ?」
しかし、彼は起きない。
「・・・警告はしたからね?」
そう言って、私は由真君に顔を近づける。
「・・・・・・何やってんの? 美鈴。」
ぴたっと私の動きが止まった。悪魔さんもさすがにこれ以降の指令は出してこない。仕方なく私は自分の意思で行動する。
「いやぁ、お姫様を起こそうと思ってだね・・・」
・・・当然由真君に殴られるわけで・・・・・。
「痛いな~もう。お姉さんは大事にしなさいよ~。」
「あいにくだが俺に『お姉さん』はいない。」
「私がいるじゃない。こんなにきれいなお姉さんが?」
「お前はいとこだろうが・・・。」
二人で階段を下りつつそんな会話を繰り広げていると、下のほうがなんだか騒がしいことに気付く。
リビングではいつものごとく大急ぎで学校に行く準備が行われている。
「なにやってんだよ・・・まだ七時だろ?」
リビングの時計を見ながら由真君がそう言うと、麻衣が首を横に振りつつ、
「由真君、あの時計壊れてる・・・。」
と、一言言った。私はすぐにケータイの時計を見る。時間はすでに八時半を過ぎていた。
「やば・・・・・。」
「やば・・・・・。じゃないよお姉ちゃん! ほら!ゆーちんも急げ!」
私たちは何でこうなんだろう・・・? もしかしてこの家は呪われてるとか・・・? ってそんなこと考えてる場合じゃないって。
急いで支度をして、学校へと走る。まさにいつもの日常といった所だなぁ・・・。
学校に到着。何とか遅刻にはならなかった・・・。これ以上遅刻すると留年にリーチがかかるから、明日から頑張らないと・・・・。
教室は相変わらず騒がしい。このクラスの人たちは何でこうなんだろうか・・・一言で言えば不良の集まり。もう少し言えば無関心な人々の集まり、誰が何処でどんな目に会おうとも関係ないのだ。だから私たちが何処で何をしようとも彼らは何も言わない。それを人はハミと言う。
「何とか間に合ったね・・・。」
「何で今日に限ってこんな目に・・・・。」
由真君たちはそう言いながら自分の席に着く。クラスからハミられてるせいか、誰も二人には話しかけない。麻衣の顔の傷を見ても誰も「どうしたの?」とか聞いたりしない。・・・まったく、何で人間ってこうなんだろうか、と私は失笑した。




