1/16
1章 命 ーはじまりー
虚は、ただじっと見つめる。
闇が濃くなっていき、人が眠っている時間。それは冷えた空気の中でまだ白い熱を発していた。
ガタンガタン……
頭上の高架線路に電車が走る。電車の光で照らされた束の間で見えた鮮明な紅。
虚は風でなびいた髪を耳にかけて
「6人目、か」
抑揚のない冷たさすら帯びた声はそう呟いてしゃがむ。空気に触れて赤黒くなってきた血溜まりに感情の乏しい自身の顔が反射する。
血溜まりを作っているセーラー服を着た少女の腹部は皮膚を切り裂かれて、中身がグチャグチャになっていた。
はみ出る腸や血肉の中はよく見えない。まるで獣に食い荒らされた獲物だ。
ただ、虚は常人には感じ取れないモノを感じ取れた。
「……お前が殺ったのか」
姿が見えない、だが虚の背後には凍るような冷たい気配があった。だがソレは問に答えることも音もなく気配は消えてしまった。
虚は、はぁ……とため息をついて闇夜を見上げ月を見つめる。
これは、やはりただの人間の仕業ではない。




