こんなんなりましたけど?
斬った刺客の一人に触れると男の姿が龍馬さんに似た姿に変わった。
こうしておけば、しばらく時間が稼げるだろうと思っての事だ。
「おんし、それ…」
その様子を見て、信じられないという顔をする龍馬さん。
そうだろうね。実のところ俺も驚いてる。いや、出来る気がしたからやってみたら出来たんだけどね。
「一体おんしは何モンじゃ?」
「信じられないでしょうけど、これは俺の夢なんです。」
「「は?」」
龍馬さんと一緒に中岡さんまで素っ頓狂な声を出す。
気持ちは分かる。逆の立場だったら『頭大丈夫か?』って問いかけてるところだ。まぁ、目の前の現象を見たらなんも言えんかもだけど…
「だからココではなんでもありなんですよ!まぁ、ココで怪我すると夢から覚めた時、同じ怪我してるんですけどね?」
「それって、おまえ…」
何かに気づいたように中岡さんが言う。
もしかして、俺の置かれたこの現象の事、この人何か知ってんのかな?
まあいいや!
「おんしは…この世界に住んじょるもんじゃないがか?」
「そんな事より、脱出しますよ!!」
時間が経つと増援が来ないとも限らない。まずは身の安全を確保するのが先だろう。
店の人に土佐藩邸に連絡するようにと伝え、俺たちは土間からの抜け道を通って寺へと抜ける。
逃げている途中、俺は自分の事を二人に話した。山田藤吉に見えるだろうが中身は違うという事を…
俺がそう言うと、中岡さんがどおりで普段と雰囲気が違ったわけだと納得していた。
龍馬さんが俺の名前を聞いてきた。
「大和尚輝です。」
何も考えずフルネームで答えてしまった。
まぁ問題ないよね?夢なんだし…
龍馬さんはそのまま姿を眩ませた。
新政府が発足した後、龍馬さんは海援隊に本腰を入れる為、本拠地を一旦海外へと移すと言っていた。
翌日…
目が覚めた瞬間、全身に重たい倦怠感が残っていた。昨日の夢…いや、あれはもう“夢”と呼んでいいものなのか?
ベッドの上で体を確認する。今回は怪我をしていないはずなので傷は見当たらなかったが、足が筋肉痛になっていた。運動不足なわけはないのだが、もしかしたら夢の中の自分は運動不足だったのかも知れないと納得する事にした。
とりあえず無事に目を覚ませた事に安堵して、俺は大学へと向かった。
今日の単位取得を終えて、家路についた。家の近くで俺を追い越した高級車が止まった。
中から出てきた人が俺に向かってくる。
「やっと見つけましたよ」
「?」
「あなたが『龍馬』の命の恩人ですね?」
「はい?」
この人誰?いったい何言ってんの?
「あなたが高祖父を助けてくれたことは調べがついてわかっています!!本当にありがとうございました。」
「いやいや、私は『山田藤吉』じゃないですよ」
俺がそういうと、その人は一瞬驚いた顔を見せた。
「なるほど。これで確信が持てました。あなたで間違いありません。なぜなら龍馬を救ったのは、『中岡慎太郎』という事になっていますから!!」
「!!?」
じゃあなんで?
「何故、私があなたの事を知っているかと言えば、龍馬の日記に書いてあったからです!!恩人の名は『大和尚輝』とね。もっとも…あなたが『山田藤吉』の名を出すまでは、私も半信半疑でしたけど。」
感謝され、名刺をもらって話を聞くと、俺の知る歴史と今とでは少し変わっているようだ。
要するに歴史が改変されていた。
海援隊は貿易商として大きくなってるんだってよ!
細かいことはともかく、龍馬は成功したってことやんね!
これは良いこと?悪いこと?
坂本さんと別れた後、俺は家に戻って昨日の読んだ書籍を確認してみる。
昨日まで“暗殺された”と書かれていた龍馬が、今日は“貿易商として成功”と記されている。
ページの端に、見覚えのない日付が記されていた。
う~ん…これは
今後は夢の中での行動には十分注意しないとあかんかも?




