プロローグ
よろしくお願いします!
誰にでも好きな異性の傾向とかフェチとかそういったものはあると思う。私はそれが女攻めというだけだった。
物心ついたころからなんとなく自分の趣味がわかっていた。周りが少女漫画のヒーローのことでキャーキャー言っている時、私は主人公に恋破れた当て馬のことで頭がいっぱいだった。
むしろドSで主人公に甘い言葉を囁くようなヒーローはあまり好きではなかった。
転機は中学生の頃だった。友達に乙女ゲームというものを教えてもらったのだ。初めてプレイするとき最初は慣れないもので戸惑ったが、私はすぐに乙女ゲームにハマった。
漫画などは見てきたけどあくまで第三者目線だった。だが、乙女ゲームは違った。自分が主人公になり、好きな異性と恋愛をする。そのことが現実世界で同世代の男の子とあまり接してこなかった私にとっては、とても新鮮に思えた。
ゲームを貸してくれた友達が好きだったキャラは頼りがいのある俺様キャラだった。反対に私の好きなキャラは守りたくなるような健気なキャラだった。
私は色々な種類の乙女ゲームをやっていくうちに、私は自らの性癖を完全に理解した。そして私はだんだんと沼にはまっていった。
あの日は新作の女攻め乙女ゲーム、受け♥️男子の発売日だった。私は仕事を済ませた後、ルンルン気分でなじみの店に向かった。
そして商品を手に取り会計をしてもらい、あとは家に帰りカセットをゲーム機に入れ起動するだけだった。
だがそれは帰路の途中で起きた。道路の歩道の信号が青になるのを確認したあと私が歩き出すと、ふと私の体の右側が強い光で白く照らされたような気がした。
なんだろうと思い右を見ると私の近くには車がすぐそこに迫ってきていて……走馬灯というのだろうか。その瞬間色々な事が脳裏を駆け巡った。
お母さん、お父さんごめんなさい。
友達悲しむだろうな。
実家の猫元気かな?もっと長く生きたかった。
そして最後に
ーもっと乙女ゲームやりたかったなー
それを最後に私の記憶は途絶えた。