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火山の村①

「確か、この辺りのはずなんですけどね」

「そうね。でも、見事に何もないわね」


 俺たちは、前回手に入れた宿屋のレビュー本を元に、温泉宿のあるという村へとやってきたのだが、そこは一面焼け野原となっていた。

 誰かが燃やしたというのではなく、火山による土石流が原因だった。

 ちなみに宿屋のレビュー本を、温泉スパ本と呼んでいた。


「このスパ本だと、この辺りに温泉宿のある村があったはずなんですけどね。やはりさっきの街で聞いたとおり、去年起こった火山の噴火で村が焼けちゃったみたいですね」

「まぁ温泉ってのは火山の近くにあるものだからね。そういう被害があっても不思議ではないけど、それにしても見事よね」


 つかささんはその場にしゃがみ込むと、地面を触りながら残念そうにつぶやいた。

 俺たちは、スパ本を手に入れてからあの街より一番近いこの村、オッグ村を目指してやってきた。

 近くの街まで乗合馬車でやって来て、宿屋の主人に聞いたところ、去年の噴火で村が消滅してしまったと聞かされたのだ。

 村人たちは、幸い街まで逃げのびて、街の人々の援助を受けながら細々と暮らしているとのことだった。

 オッグ村ではオッドと呼ばれているモンスターの畜産が行われていたらしい。

 話では、オッドは前足がなく長い後ろ足二本で走り回るモンスターで、人は襲わず虫や穀物を好んで食べていたらしい。

 この村では、そのオッド肉料理が有名だったらしいが、噴火の時にそのオッドも置いてきてしまったのですべて土石流に流されたのではないかと言われていた。

 

「あの村のオッド肉は質が良くてね。ここのお客さんにも評判が良かったから、手に入らなくなって残念だよ」

 

と宿屋の女将も言っていた。

 

「つかささん。あきらめて次の温泉村を目指しますか」


 そう言って俺はスパ本をペラペラとめくった。

 つかささんも立ち上がり大きくため息をつく。


「仕方ないわね。とりあえず、このまま街に戻っても日が暮れるし、当初の予定通り野営出来そうなところを探しましょうか」

「わかりました」


 そうして、俺たちは野営出来そうな場所を探して、その辺の散策を始めた。




「ほんっとに最悪ね」

「こればっかりは仕方ないですよ」


 俺たちは森の中で野営出来そうな場所を見つけて準備をしていたのだが、急に雨が降り出して、場所を移動したのだ。

 そしてたまたま見つけた洞窟に逃げ込んだ。


「でもこんなところに洞窟があったなんて。不幸中の幸いね」

「そうですね。ここなら雨風を凌げそうですね」

「さぁ夜も遅いしさっさと寝てしまいましょう。夜明けと共に、さっさとこんなところおさらばするわよ」


 俺たちは、街で買った厚手の布に包まる。

 すると離れて横になっていたつかささんがこちらへと近づいてきた。


「どうしたんですか?」

「いや、ちょっと、洞窟の中ってなんか気味悪いじゃない?」

「確かに、コウモリとか変な虫とかいそうですよね」

「やっ、やめてよそういうこと言うの」

「あー、すみません」

「さっさと寝るわよ」


 そう言ってつかささんは俺とは反対を向いて横になったが、背中が俺の腕にピッタリと付いていた。

 うわぁ、嬉しいけどこの腕動かしづれぇ。

 それが気になって、なかなか眠りにつけないでいた。


「ちょっとやしろくん?」


 そんなことを考えてると、もう寝たと思っていたつかささんに声をかけられた。


「えっ、なんですか? 何もしてないですよ?」

「いびきうるさいんだけど」

「いびき、ですか? って俺、まだ寝てないですけど」

「うそよ。変ないびきしてたわよ。気になって寝れないんだけど」

「そんなこと言われても、、、」


 まだ寝てないのに、いびきとか言われても意味わからん。それにいびきって自分ではどうすることも出来なくね? とも思う。


「ほらまた」

「いやだから寝てないですって。今、会話していたでしょう」

「じゃあなんなのよ。これ、、、って、今、聞こえた?」

「えっ?」


 俺たちは起き上がり耳を澄ます。

 何も聞こえない。

 つかささんは、今度は地面に耳を押し付ける。


「やっぱり、やしろくんのいびきじゃない」


 俺も真似してやってみる。

 確かに、うめき声のようなものが聞こえる。


「これって?」

「この洞窟、ひょっとして奥に誰かいるの?」

「マジっすか」


 俺たちは顔を見合わせる。そしてお互いの血の気が引くのがわかった。


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