温泉郷の村②
「へぇ、いい感じじゃない」
「そうですね。思ったより中、広いですね。あっ、イエッタ。その辺に荷物置いたら?」
「えっ、うん。ありがと」
イエッタが背負っていたカバンを置くと、相変わらず大きな音がなる。さらに屋内だと余計に響く感じがした。
「よくそんな重たそうな荷物を背負って旅してるよね? すごいね」
「もう慣れたから。それにドワーフは人間より力あるし」
「ふーん」
「ちょっと、なんでその子が一緒にいるのよ。私はまだ認めてないわよ」
「そうですか。じゃあお邪魔しました」
そう言ってイエッタが再度カバンを背負おうとする。
「いいからいいから。つかささんも、どうせ家広いんだし、一人くらいいいでしょ?」
「まったく。なんで勝手に増やすかなぁ」
そう言ってつかささんはイエッタのことを睨みつける。それにイエッタも負けじと睨み返す。
「わかっているでしょうけど、このお酒は1滴もアナタにはあげないから」
「そんなこと気にしてたんですか? 別にいりませんよ」
やはりイエッタを連れてきたのは失敗だっただろうか。
でも、せっかく久しぶりに再会した彼女をあのままスルーは出来なかった。
「ところでさっきも聞いたけど、どうしてこの村に? 観光じゃないんでしょ?」
「あぁそれですか? 実は、この村のすぐそばにあるあの山に、昔使われていたっていう伝説の鍛冶場っていうのがあるらしくて。それを探しに来たんです」
「なるほどね。確かに、あそこも活火山みたいだし、活火山のそばには鍛冶場があるイメージはあるか」
「はい。やはり私は優れた剣には不思議な力があって、その力が人々をきっと幸せにすると思っていますので。そこでお酒を飲んでいる方にはわからないでしょうけど」
「わかるわよ。私だってそれくらい」
「ホントですか?」
「剣に限ったことじゃないけどね。誰かが強い思いを持って作った物には不思議な力が宿るものよ。ただそれが人を幸せにすることもあれば、不幸にすることだってある。なんなら、その力を発揮なないままだったり、発揮しているのに誰にも気づかれないってこともある。ただ言えることは、もしその不思議な力が宿っていたとして、それを発揮できるのは作った本人とは限らないってことよ」
「つまり何が言いたいんですか?」
「そのうちわかるようになるわよ」
「やしろさん。やっぱり私、あの女嫌いです」
「そっかぁ、それは残念」
そう言いながら内心は、いいコンビだと思うけどなぁと思ってみる。
「じゃあその鍛冶場をこれから探す感じなんだ」
「でもあまり手がかりがなくって」
「じゃあアンタ一緒に探してあげなさいよ」
「えっ俺ですか?」
「家に泊めるなんてことまでしたんだから、それくらい付き合ってあげなさいよ」
「つかささんは?」
「私はイヤよ。お酒飲んじゃったし。今日はもう動きません」
「わかりましたよ」
「いいんですか?」
「うん。大丈夫だよ。とりあえず村の人に聞いて回ってみようか」
そうして俺は、伝説の鍛冶場探しってのをすることになった。




