気が付けば異世界
そうだった。ラブホに行ったんだ。人生初の。
思い出すと、ちょっと恥ずかしくなり身体が火照る。ホテルだけに、、、
言うてる場合か。
「ん、どうしたの?」
「んはわっ!」
つかささんの声に変な声が出る。
彼女は目をこすりながら起き上がった。
「? ここどこ?」
「さっ、さぁどこなんでしょうか、、、」
それは俺も知しりたい。
つかささんは静かに辺りを見回す。
そしてゆっくりと俺の方を見た。
「なっ何これ。ちょっとここどこよ。あんた私に何したのよ!」
「知りませんよ。自分も目が覚めたらここにいたんですから」
「ちょっとどういうことよ。じゃあなんだって言うのよ。意味わかんないじゃない。ちゃんと説明してよ」
「落ち着いて下さいつかささん。ホントに俺も何も知らないんです。二人でホテルに行って、そしたらホテルが火事になって、、、」
「えっ、ホテル行ったの?」
「えっ、そこからですか?」
取り敢えず、俺の覚えていることを伝えた。
「そんなことがあったの。って、私そんなことしたんだ。うわぁぁ」
三角座りして顔を覆い隠している。
「あっ、でも俺なにもしてないんで」
「えっ、何もしてないの?」
「はい。何もしてないです」
「じゃあいいか。ん? いいのか? ってか何で何もしてないんだよ。興味なしかよ」
「いやそういうわけじゃ。だってつかささん寝ちゃいましたし。興味はそりゃあ、、、」
「あぁ一応、その気はあったのね。って、上司にそんな気起こしてんじゃないわよ」
「いや後輩にそういう気起こしたのはつかささんでしょう」
「酔っ払いに常識を求めんじゃないわよ」
「えぇー」
普段常識人の彼女から放たれた無茶苦茶な言い分に言葉を失う。
「とっ取り敢えず、この状況をなんとかしましょう」
「そうよね。ってかホントにここどこなのよ。奥多摩? じゃないわよね」
「まぁこんな草原はないでしょうね。行ったことないんで知らないですけど。北海道とかならありそうですけど」
「さすがに北海道はないでしょ。なんで都内のホテルから北海道に飛ばされてるのよ」
「あとは異世界とか」
「い・せ・か・い? 何それ、何言ってんの?」
「いや、たまに聞くじゃないですか。死んだら、どこか知らない世界に転生するっていう」
「聞いたことないわよ。何言ってんのアンタ」
「あっいや、すみません」
「まぁいいわ。とにかく動きましょう。このままここにいて、夜になるのはマズイわ」
そう言いながら彼女は立ち上がると、手で軽くお尻を払った。
それにならって俺も立ち上がる。
と言っても、ホントにどこに向かえばいいのか。
「ん、ちょっと待って下さい。何か聞こえません?」
「ホント?」
二人で耳を澄ます。
「聞こえた。遠くの方で叫び声みたい」
「はい、男の人の叫び声が聞こえます」
「行ってみましょう」
俺たちは、その叫び声のした方へと向かった。