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幽谷の村①

「止まれ!」

 

 山道を行く俺たちの前に、突然降ってきた人影はそう言い放った。

 まぁ言われなくても、突然上から降ってきたらそりゃ立ち止まるだろうと言いたいが、そこは黙っておく。

 

「ちょっと、いきなり上から降りてきたらビックリするじゃない。そりゃ言われなくても止まるでしょ」


 あぁ、それ言うんだ。せっかく言わなかったことを、あっさりつかささんに言われてしまい少し虚しい気持ちになる。

 目の前の男は、つかささんの気迫に少し戸惑っているようだ。

 では、なぜつかささんがそれほど驚かずいられるかというと、それはここの近くの街に立ち寄った時に情報を仕入れていたからだ。


「お前たち、人間だろ? 驚かないのか?」

「えぇまぁ、このくらいじゃあね」


 男は動揺を見せる。今まで自分の姿を見た人間とは反応が違ったからだろう。

 そう男は、人であって人ではない。

 先に会ったエルフやドワーフとも違う。

 毛むくじゃらのカラダ。大きな耳に、尻尾が生えている。

 いわゆる人狼というやつだ。

 逆に人狼の青年が固まってしまったので、俺が助け舟を出す。


「実はこの先に人狼の住む村があると事前に聞いていたんだ。だから驚かなかった。でも、木の上から降りてくるとは思わなかったよ。木登りも出来るんだね?」

「木に上がれる奴はそれほどいない。俺は得意なんだ」

「そっか。すごいね」


 人狼は少し照れた様子を見せる。人に褒められると嬉しくなるのは人間も人狼も一緒なのか。

 あとつかささんが言っていた「他種族と交流する時は堂々としていろ。それは営業も一緒だ」とのことだった。こちらが不安がっていたり怯えていたら、それは相手にも伝わる。人によっては、それで相手を不安にさせたり、舐められてマトモに取り合ってもらえないとのことだ。


「ところでなんで木の上なんかに?」

「見張りだ。村を守る為にな」

「でも別に木の上じゃなくても」

「木の上だと相手に気づかれずに相手のことを観察できる。それに先制攻撃もしやすい」

「なるほどね。それで、木の上で人間から村を守っていたのか」

「違う」

「違うの?」

「そんなことよりお前たち、ここへ何をしに来たんだ? 人狼の村があると知ってやってきたのだろう?」

「そうなんだ。実は、俺たち温泉を巡る旅をしていて。君たちの村の先に温泉があると聞いてきたんだ」

「温泉? わざわざ? 変わった奴らだな」

「よく言われるよ」

「でも無理だ」

「なんで? 人間だから? やっぱり人間と人狼は相容れないの?」

「そうじゃない」

「じゃあなんでよ。理由を説明してよ」


 そこでつかささんがしびれを切らして割って入る。

 それに彼は半歩後ろへたじろぐ。

 彼は完全につかささんに対して苦手意識を持ってしまったようだ。


「お前たち。旅をしていると言ったな。腕は立つのか?」

「うーん。少しは、、、でもそこまでじゃないかも」

「そうか。でもそこの女なら、、、いいだろう。村まで案内してやる。話は村長から聞いてくれ」


 そう言うと、彼はものすごいスピードで山の奥へと消えていった。

 いや、はえぇよ。


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