表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/42

霧の森の村⑤

「しっかし、アルビナ様が人間なんかの思いついた作戦を採用するなんて、、、」

「そうね。話のわかる人で良かったわ」


 ゾフィのグチにつかささんが応える。


「話がわかるというか、全てを見通しておられるのだあの人は」

「そうなのね。確かに、あの人に見つめられると全てを見透かされているような感じがしたわ。嘘がつけないっていうか」

「そういう人なのよ。だからアナタのことも信用したんでしょうね」

「アナタは信用してくれないの?」

「私にはそんな能力ないし、小さい頃から人間、というかエルフ以外はすべて敵だと教わってきたからな。だからそういう風に生きるだけだ。そしてアルビナ様に従うだけ」

「そう。でもいいことだと思うわ。アナタ、エルフの村の戦士なんでしょ? 強さにはそういうの、必要だと思う」

「やっぱりお前、ムカつくな。私の嫌いなタイプだ」

「そっか、残念。私はアナタのこと、好きよ」

「チッ、ムカつく。もういい、そろそろだ。抜かるなよ? コジマ! ウルズラ! 構えろ!」


 そう言うとゾフィが木の上へとジャンプする。

 エルに教わったが、アレは魔法で風を操って身体を軽くしているそうだ。

 

「さぁ私たちも行こうか、やしろくん」

「はい」


 そして、森の霧はエルフたちが水の魔法を使って村を隠すために発生させているらしい。

 俺たちはその霧の中へと入っていく。

 そこでオルクルたちの姿を捉える。

 身長は3メートル弱といったところか。顔は豚のようにも見えるがカエルのようにも見える。肌は青のような緑のような感じで毛は少し生えている。服というほどでもないが布を身に付け、手には棍棒のようなモノを持っている。道具を使うというくらいの知性はあるのか。

 それを見て少し緊張する。

 モンスターとはいえ、知性のそこそこある生き物とこれから殺し合いをするのだ。殺人罪を問われることはないだろうが、少し気が重い。

 

「やしろくん、大丈夫?」

「すみません。ちょっと考えちゃって。彼らにも家族とかいるのかなって」

「そんなこと考えてたの? それは驕りよ。もう勝った気でいるの? 殺されるかもしれないのよ? まずは自分が死なないことだけを考えなさい」

「はい。すみません」

「そこは、すみませんじゃなくてわかりました、よ」

「わかりました」


 そして、エルフたちの弓矢の一斉射撃が始まり、それを合図に俺たちも飛び出していく。

 突然の襲撃に驚き慌てるオルクルたち。

 近づくと一層デカさを感じるが、弓矢の援護を受けながらオルクルたちに切り込んでいく。


つかささんの立てた作戦はこうだ。

 オルクル達は、おそらくエルフの村を狙っているが、だがエルフの村がこの森の中にあるとの確信はないんじゃないかという読みだ。

 そこでゾフィ達が迎え撃てば、少なくともこの森にエルフがいることがバレる。オルクルたちを全滅できれば問題はないが、もし一匹でも取り逃がすとエルフの村がここにあることがバレて、さらに危険に晒される。

 そこで俺たちが出て行って、実はこの森にエルフはおらず、人間がオルクルを狩るために用意した罠だったと思わせる。

 そうすることで、エルフの村ごと守ろうというのだ。

 もちろん俺たちだけでオルクルに勝てる保証はない。なのでエルフの戦士たちには霧で姿を隠しながら、遠距離から弓などで攻撃してもらい、大勢の人間に囲まれていると思わせ、追っ払うというのが作戦だ。


 エルフ達は攻撃用の魔法も使えるらしいが、魔法を使うとエルフがいることがバレてしまうので使えない。

 あとは如何に大勢の人間に囲まれているかと思わせて、相手を追っ払うことだ。

 こちらの認識ではオルクルは4体。直接攻撃できるのは俺とつかささんの二人だ。

 先頭の1体の腕に矢が刺さる。一瞬動きが鈍ったところで勇気を出して懐に飛び込むと剣を払い切りつける。今まで戦ったモンスターより肉が硬い気がする。

 剣を突き刺した方が効果的だが、剣が抜けなくなり逆に危険だと以前学んだ。

 相手の攻撃をかわしながら相手の体に傷をつけていく。その度に相手の動きが鈍っていく。そして動きが鈍る度に矢が当たりやすくなり、そして1体が絶命する。

 それに驚き固まっているもう1体も矢の的になり倒れていく。

 それを見た1体が逃げていく。それを庇うかのようにもう1体が立ちはだかる。

 逃げる仲間を守っているのか。

 そこで俺の足が止まる。

 

「やしろくん!」

「はっ、はい!」


 つかささんの声に自分を取り戻し、横に転がりながら相手の大振りの一撃をかわす。

 そしてつかささんと二人で相手を集中攻撃し、なんとか倒した。


「つかささん!」

「やしろくん、まだよ。逃げた奴を追おう」

「わかりました」


 そして森の中を駆ける。

 エルフたちはオルクルが逃げやすいようにと、森の外へ誘導するため霧を少し薄くしてくれている。

 その薄くなった部分をたどっていく。

 そして森を抜けたところで、息絶えたオルクルとそれを囲むように立っている傭兵たちに会う。

 

「うわっ、びっくりした。急に森の中から傷ついたオルクルが飛び出してきたから何事かと思ったら、お前たちか。なにやってんだよ」

「えっ、えーと、、、次の町まで近道しようと森に入ったら迷っちゃって。そしたらオルクルに出くわして」


 適当にごまかす。


「そっ、そうか。それは災難だったな。しかし近道って、森を突っ切っても近道にはならんだろ」

「えっ? そうでしたっけ? ねぇ?」

「あはははぁ、そうだったかしら。うっかりしてたわ」


 俺に合わせてつかささんも笑ってくれる。


「それと他のオルクルはどうした?」

「えーと森の中で、、、」

「倒したのか!? なんて奴らだ。見かけによらず強いんだなお前ら」

「そっそうでもないんですけど、、、」

「気に入った。気分もいいし、今夜奢るよ。一緒に飲もうぜ。どうせ今から次の町に向かったって、夜までにたどり着けないよ」

「じゃっ、じゃあお言葉に甘えて」


 そして結局、モアルの村に俺たちは戻ることになった。

 俺とつかささんは森を振り返ると、無言で「じゃあね」とエルフ達に挨拶した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ