霧の森の村④
「つかささん、付いて来てますか?」
「いるわよ、大丈夫」
やはり森の中の霧は濃い。
俺はほとんど手探り状態で森の中を進んでいく。
「ねぇ待って。この匂い」
「あの温泉ですかね」
「行ってみましょう」
俺たちは慎重に歩を進める。
そう、慎重に進めて良かった。
なので危うく俺の喉元にナイフが刺さらずに済んだ。
ってナイフ!?
「なんだアンタたちか」
ナイフの持ち主がホッと一息漏らす。
やはりというかなんというか、エルネスティーネだった。
「エル、また村を抜け出して来たの?」
「うっ、だって、、、」
「だってじゃないでしょ」
つかささんが珍しく怒っている。その圧に押されてエルも大人しくなる。
「でも良かったわエル、アナタに会えて。大変なのよ」
「大変? 何が? 二人も温泉に入りに来たんじゃないの?」
「それどころじゃないんだ、エル」
俺たちは事情を説明した。
「オルクルが!? 大変、みんなに知らせなきゃ」
「良かった。じゃあエル、頼んだわね」
「わかった。って、二人はどうするの?」
「いや、私たちは帰るわよ」
「帰り道わかるの?」
「えーと、、、」
振り返ると真っ白な森が広がる。
「じゃあついて来て」
「えっ? ちょっと待って」
急にエルが走り出すのに俺たちはついて行った。
エルについて行くとそこには小さな村があった。木々に寄り添うように家が建ち並ぶ。ただ特徴的なのが、その家が木の上の方にあることだ。エルフたちはその家と地面をフワフワ浮かびながら移動している。
「なんだこれ。羽もないのにどうやってるんだ?」
「魔法だよ」
「「魔法!?」」
つかささんと二人で声がハモる。
「そっか、人間は魔法使えなかったよね」
「エル! また抜け出していたのか!」
そこで、エルのことを怒鳴りつける声が聞こえた。
村人たちがみんなこちらを見る。
村の奥から一人の美しいエルフがやってくる。ゾフィだ。
「しかも、この間の人間まで村に連れてきて。どういうつもりだ!」
「ゾフィ、待って。それどころじゃないの!」
「それどころじゃないって。人間を村に入れることより大変なことってなんなんだ!」
「オルクルがここに向かっているらしいの」
「オルクルが?」
「そうなんです。オルクルがここに向かっていると聞いて。俺たちは森であったエルにそれを伝えに来たんです」
俺も一緒になって説明する。
しかしゾフィの表情は怪訝なままだ。
「信用できるか? そういう嘘をついて、エルに村まで案内させて私たちを襲うつもりじゃないのか?」
「ちょっと待ってよ。もしそうだとしたら、今ここでエルを人質にとって既に村を破壊し始めてるわよ」
そこでつかささんが割って入ってくる。
そこでゾフィとつかささんのにらみ合いが始まる。
大人のお姉さん同士のにらみ合い、かなり怖い。
「そこまでです」
「アルビナ様」
「ゾフィ、落ち着きなさい」
「はっ、はい」
ゾフィが頭を下げる。
見るとエルも膝をつき頭を下げている。
「エルフの女王のアルビナ様よ。つかさ達も頭を下げて」
「えっ、あぁ、うん」
俺たちもエルと同じポーズを取る。
「人間の二人。よく知らせてくれました。私も今、オルクルの気配を感じ、ゾフィにその事を伝えに来たのです」
気配を感じた? なら、俺たちが伝えに来る必要なかったんじゃ、、、
「ゾフィ。ウルズラ、コジマと一緒に村の戦士たちを集め、臨戦態勢を整えなさい」
「はっ!」
ゾフィはそう言うと、村の奥へと戻っていく。
「エルネスティーネ」
「はい!」
「アナタ、また村を抜け出していたようね」
「、、、はい」
「村は私やゾフィがいますからなんとかなりますが、村を抜け出していたアナタはオルクルに襲われていたかもしれないのですよ?」
「はい、、、」
「人間の二人がアナタを村へと導いてくれたから良かったものの。村の掟を破り勝手な行動を取ればどういうことになるかわかりましたか?」
「はい、申し訳ございません」
「よろしい。ではアナタは、村の裏よりこの二人を森の外に連れて行ってあげなさい」
「外にですか!?」
「そうです。これからオルクルを追い返す作戦が始まります。この心優しい二人を危険にさらすわけには行きません」
「わかりました」
「ちょっと待ってください!」
そこでつかささんの手が上がる。
「なんでしょう? 美しい人間の女よ」
「あの、私に一つ考えがあるのですが、、、」
「考え?」




