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プロローグ
目を覚ますと、目の前には女性の可愛い寝顔があった。
スヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てている。
独身一人暮らしの俺にとって、朝、目を覚ますと隣で女性が寝ているというのは憧れの展開ではあるのだが、まさか現実になるなんて。
正直、昨夜を共にした彼女が先に起きていて、彼女の包丁でまな板を叩く音で目が覚めるのとどっちが良いかと問われると、結構悩ましい。
なんなら、起きたら服を着込んでいる彼女の後ろ姿が見えて「起きた? 私、先に行くね」とかでも全然いい。
だがそう上手くはいかないのが現実というものだ。というか、これは現実なのか?
彼女も俺も裸とかではなく、もちろんバスローブ姿でもない。昨日着ていたスーツをそのまま着ている。
そして、ここは俺の自宅でも彼女の部屋でも、ましてや駅前のホテルでもない。
草原の真ん中だ。
あたり一面草原で、手に当たる草がチクチクと痛い。
風は吹き抜け気持ちがいい。そして遠くに見えるのは森と山々だ。
いったいどうしてこうなった?
俺は昨日のことを思い出してみる。