疑問
減った薬がまた増えた。
点滴も増えた。
柊木の演奏を聞く機会は減った。
気を使っているのだろうか?
まぁ良くなったらまた聞かせてもらえばいい。
...さっきの先生の態度が妙に気にかかる。
「夢...ですか?」
「はい。覚えていないんですが、とても大事な夢だった気がするんです。」
少し考えたあとこう続けた。
「先生、俺本当に骨折だけなんでしょうか?」
「...はい。」
少し間ができた後、先生は続ける。
「...朝空さんは治療に専念してください。」
なぜ、妙な間があったのだろうか...?
気を失う前、そして気を失っていた時に見た夢。とても大事なものを思い出していた気がする。
...でも、何も思い出せない。
そこへ柊木が戻ってきた。
「朝空くん...大丈夫...?」
「大丈夫。てか、それしか言わないな。」
「だって...2日間も意識が戻らなかったんだよ?心配するよ...」
「知り合って間もないのに、柊木は優しいんだな。」
「...大切な友達だもん。」
「ありがとうな。」
ふと、曲名を決めてから聴いていない曲を思い出した。
「……『あの夏をもう一度』聞かせてくれないか?」
「え……? う、うん。分かった……。」
柊木が演奏する。その曲を聞くと、頭痛が激しくなる。
さぁ、あの夏をもう一度。