柊木の演奏
「朝空くんが入院したのって……事故だっけ?」
「そう。交通事故だな。横断歩道歩いてたら信号無視の車がどかん。奇跡的に腕の骨折だけで済んだけどな。あっちの病院が空いてないなら入院なんかいらないって言ったのに。」
「こっちにはもう顔見知りなんて居ないから暇なだけだ。」
「……そっかぁ。」
「ーーーーーーだね。」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん!何も!」
「朝空くんと友達になれたから、朝空くんの親御さんには感謝しないとね!」
「まぁ俺もあんなに綺麗なヴァイオリンは初めて聴いた。それだけで戻ってきたかいがあったよ。」
「えへへ! 照れるな! 朝空くんヴァイオリン好きなの?」
「あぁ。弦楽器は好きなんだが、その中でもヴァイオリンは飛び抜けて好きだな。」
「じゃあまた聞かせてあげるね!なんか聴きたいものとかある?」
「柊木に任せるよ。」
「おっけー!じゃあ、弾くね!」
心地いい風が部屋を満たしていく。
木々のざわめき。波の音。
雲ひとつない青空にかける絵に描いた様なひこうき雲。
そんな中違和感を覚えさせない爽やかな弦楽器の旋律。
そんな映画のワンシーンのような時間をすごしていると急に頭痛が激しくなる。
なにかわすれているような
その旋律が止むと同時に頭痛も治まった。