経過
「うん。いい感じだね。なんか痛いところとか、調子悪いところとかあるかな?」
「少し頭が痛いくらいで……あとは特には。」
「……なるほど。とりあえず点滴に頭痛を緩和する薬追加しとくね。うん。OK。病室に戻って大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。では失礼します。」
「お父様とお母様は少しお残りください。」
自販機で飲み物を買い、病室へ戻る。
「あ、朝空くん!どうだった?」
「点滴が増えるよ。まぁしょうがないな。あとは大丈夫だって。」
「そっかあ。そんなに異常がなくてよかった!」
「そういや柊木はなんで入院してるんだ?身体は何ともなさそうだけど。」
「私ね。海も空も見たことがないんだ」
かもめのなく昼下がり
無機質な病室の窓から見えるのは
外に広がる一面の海と雲ひとつない青空
「……どういうこと?」
「正確には色だね。青が見えないの」
「先生はきっと治るって言ってくれてるけど、自分の体の事は自分がよくわかってるから...」
「ねぇ。海と空はきれい?」
漠然と見ていた景色。いや、景色とすら認識していなかったかもしれない。
そんなものに今更何を思えばいいのだろう。
「まぁ、きれいなんじゃないか?」
「そっかあ。あーあ。私も見たかったなぁ。」
「青が見えないって事は、海と空は何色に見えてるんだ?」
「うーん……灰色に近いかな?朝空くんの髪も灰色に見えるよ?きっと綺麗な青色なんだろうね。」
そういうと柊木は柔らかく笑う。