文化区画―コンサートホール・劇場・円形闘技場・ドロシュ学院・大図書館・美術館・博物館
文化は不要不急ではありませんよね。
文化こそ必要不可欠なものです。
それとベーシックインカムを前近代的世界に突如導入したらどうなるのか、理想的な展開を想像してみました
これまで政治にかかわるような部分を見てきたが、続いてインチェルが案内してくれたのは文化・芸術・学問施設が集まる区画だった。
この区画の特徴は水のせせらぎと木の葉のささやき、そして吟遊詩人が奏でる音楽である。
文化と芸術、そして学問こそ不可欠なものである。
だから、この区画の開発にはほかの区画以上の資本を投入することにしてある。
区画の広さも他よりも圧倒的に広く、開放的であると同時に、喧騒から離れと独特の心地よい静寂の空間も存在する。
インチェルの都市設計の中でも特に力を入れてもらった区画だ。
そしてここには子供から老人まで様々な人々がもうすでに集まり始めている。
リリアン:「ヨウイチロウは確かにいろいろずれている気はしていたけれど、商業よりも軍事よりも文化にこれだけの資本と労力を注ぎ込むのはやはり驚きね。」
インチェル:「そうですね。たいてい軍事や産業には時間も労力も資本も投入する一方で文化芸術をおろそかにするというのが残念ながら多くの国で見られます。その点このドロシュは他とはくらぶべくもなく卓越しているといって過言ではないでしょう。」
ユカワ:「インチェル、この区画がこの都市の中で最も大切なんだ。そして、期待を超える素晴らしい区画になりそうじゃないか。」
インチェル:「私だけで設計を担っているわけではありません。特にこの区画はここを活動の拠点にしたいという者たちが知恵を出し合って作り上げています。自律的に形成されてこそ自由な空気を吸いながら皆が活躍できるというものです。」
ユカワ:「その通りだ。ここもこれからが楽しみだな。早くいろいろな人々が集って、毎日いろいろな催し物がみられるといいな。楽しみで今からワクワクが止まらないよ。」
リリアン:「それにしても、彼らが自由に活動するためには生活が安定しないといけないわよね。収入が不安定だといろいろ困ってしまうじゃない?」
ユカワ:「確かに、安定した収入がないと創造性を発揮することもなかなかかなわないだろう。だから、この区画に限らず、このドロシュとカザド・ドゥムの連合都市ないでは、都市住民には無条件で毎月定額の給付金配ることにした。」
インチェル:「それは確か以前の円卓会議の場でユカワ様が提案されていたベーシックインカムという制度のことですね?」
ユカワ:「そうだ。健康で文化的な生活を働かずとも送ることができるだけの十分な額を都市住民全員に定期的に給付する。」
インチェル:「あの制度が実行されて以来かなりのお金が都市住民に市政府から拠出されるようになったそうですね。しかもそれが他地域からの移住者を引き付ける要因にもなっているうえ、経済の好循環の契機にもなっているようですね。」
ユカワ:「ベーシックインカムがうまくいって本当に良かったと思っている。この制度のおかげで人々は生きていくために働くのではなくより豊かに生きるために働いたり創作活動を行ったりできている。他国では冷遇されていたり苦しい状況にある才能ある人々を吸い寄せることでドロシュの文化は急速に多様性とその水準を上昇させている。このシステムを続ける限り、好循環が持続できると信じている。」
リリアン:「カザド・ドゥムの採掘権や貨幣鋳造権といった無尽蔵の財源がないと、ここまで思い切ったことはできなかったでしょうけれど、間違いなくうまくいっているように見えるわね。この先どうなるのか本当に予想がつかないけれど悪くなるようには思えないわね!」
ゴンドラに揺られながら、水路をゆるゆると進みながら、穏やかな時間が過ぎていったのだった。
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