王女リリアン
「お怪我はありませんか?盗賊に襲われていたようでしたのでとっさに周辺にいたものを全員気絶させてしまいましたが、お気を害されていたら申し訳ありません。わたくしにあなた方への敵意はございません。」
俺は、慣れない敬語を使ってこの、見るからに身分が高そうな2人に話しかけた。
「いえ、助けてくださってありがとうございました。わたくしはこちらのリリアン様にお仕えしている執事兼護衛のパーカーと申します。」
「わたくしはリリアン。ハザール王国の王女よ。助けてくださってありがとう。」
「王女様でいらっしゃいましたか。申し遅れました、わたくしは魔の森の奥深くより参りました、ユカワ・ヨウイチロウと申します。」
「魔の森の奥地ですって!?信じられませんわ!」
「確かに、魔の森は別名死の森。獰猛な魔獣がうごめいており人が住んでいるという話は聞き及んでおりませんでした。しかし確か…」
「お2人は賢者マーリンをご存じでしょうか?わたくしは彼に後継者として選ばれたものなのです。」
「なんですって!?あなたがあの大賢者マーリンの後継者ですの!」
「そうです、魔の森には魔法の深淵を覗くため外界との接触を一切絶って怪しげな研究をしている魔法使いがいるとうわさで聞いたことがあります。まさか、それが大賢者マーリン様であったとは。。。」
「お2人は先代をご存じなのですか?」
「はい、マーリン様は伝説の魔法使いとして世界中にその名を知られております。」
「そうだったんですか。」
「大賢者マーリン様の後継者と先ほどおっしゃったと思うけれど、マーリン様はどうなさったの?まさか・・・」
「はい、先代も不死身となることはかなわず、わたくしを後継者に選ぶと同時に亡くなられたようです。」
「亡くなられたようですってどういうことかしら?」
「わたくしは、先代から様々なものを受け継ぎましたが、先代の死体などは目にしておりませんので、亡くなったと断言することはできません。」
「そう、そうなのね。」
「リリアン様、ユカワ様、さまざま話したいことはございますが、ここは魔の森から近く、魔物の脅威もございますし、気絶している盗賊も何とかしなければなりません。とりあえず、どこかしら安全なところで落ち着いて話をいたしましょう。」
「そうだった、パーカーさん。おっしゃる通りです。ただ、少しお伺いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか。」
「ええ、どうぞ。」
「王女様の護衛がパーカーさんだけというのはどういうことなのですか。騎士団など周りに見当たらないので、それが不思議だったのですが。」
「ユカワ様、それにはいろいろ事情がございまして、それにも関連するのですが、ユカワ様に突然恐縮ながらお願いしたいことがございます。」
「なんでしょうか。」
「先ほどの戦闘の様子からして、ユカワ様は相当の魔法の実力をお持ちのこととお見受けいたします。そこで、どうか、姫様の保護をお願いできないでしょうか。」
「パーカー!突然何をお願いしているの?わたくしは護衛など必要ありません。パーカーにもこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないし…」
「ちょっと、お待ちください。リリアン姫はもしかして、王国から追われているのですか?」
「そうでございます。それも含め詳しい事情をお話ししたいのですが、ここは何分危険です。とりあえず安全な場所に移動してからではだめでしょうか。」
「そ、そうですね。では、お2人は馬車に乗ってお待ちになってください。今からこの盗賊どもを片付けますので。」
「それでは時間がかかってしまいます。盗賊は放置して、とりあえず馬車でここから最も近いラガドの街に向かうのが良いかと。」
「ラガドの街に向かうのには賛成です。その道中はワイバーンのミラーに付き添ってもらえば大丈夫でしょう。盗賊は瞬時に片づけて御覧に入れます。」
「そうですか。では先に馬車に乗って待っておりますのでよろしくお願いいたします。」
「ちょっと、パーカー私を置いて勝手に話を進めないでちょうだい。」
「いえ、姫様、今はわたくしの指示に従ってください。姫様の命をお救いするためです。」
「し、仕方ないわね。」
「ではユカワ様できる限り手早くお願いいたします。」
「了解しました。」
そうして、2人が馬車に向かって歩き出すとともに俺は無属性魔法のサイキックを発動して盗賊たちを宙に浮かべ1か所に集めた。闇魔法のフォーストスリープで全員を強制的に眠らせる。そのままディメンションホールを開いて50人程度の盗賊たちを放り込んだら作業完了だ。
「パーカーさん、リリアン様、盗賊は片づけましたので早速街に向かいましょう。」
「ユカワ様はあの大賢者マーリン様の後継者だけあってすさまじい魔法の実力をお持ちですね。やはり、ぜひ、姫様の保護をお願いしたく存じます。」
「ちょっと、パーカー、確かに彼の魔法はすごいけれど、だからと言ってなぜ私の保護を頼むのよ。私は私の身くらい自分で守れるわ。」
「そうはいきません。先ほどもユカワ様が助けに来てくださらなかったら死んでいたやも知れないではないですか。」
「そ、それは、さっきはほんの少しばかり油断していたからで・・・」
「ユカワ様、ワイバーンのミラー様で護衛をしてくださるとのことでしたが、ぜひ、事情を説明したく思います。一緒に馬車に乗ってはいただけないでしょうか。」
「いいのですか。さっき会ったばかりの私をそんなに信用してしまって。」
「ええ、あなたは我々、いえ、姫様に危害を加えるようなお方ではありません。」
「信用していただいてうれしいです。では、ついでにワイバーンが街に近づくと恐らくパニックが起きそうですから、ワイバーンには不可視化の魔法をかけます。それと、見かけだけにすぎませんが、騎士団を護衛として連れていくことにしましょう。」
「え、あなたは何をおっしゃっているの?こんな辺境に騎士団をどうやって呼ぶというの?しかもワイバーンを不可視化するなんてどうやるのよ。」
「では御覧に入れましょう。まずは、ワイバーン・ミラーにカモフラ―ジュの魔法を!」
「あら、あんなに大きな巨体が見えなくなったわ。どういうことなの!?」
「続きましてミラージュの魔法で幻影騎士団を出現してご覧に入れましょう。馳せ参ぜよ幻影騎士団!」
「え!?今度は突然100騎を超える精鋭騎士が現れたは!?あなたいったい何者なの!?」
「わたくしはユカワ・ヨウイチロウ、賢者マーリンの後継者でございます。」
「今目にした何もかもがにわかには信じがたいですが、これで道中の不安はなくなりました。これだけの騎士が警護している馬車を襲う愚か者はそうそういないでしょうな。」
「では、そろそろ出発しますか、パーカーさん。」
「はい、そういたしましょう。幸い馬も馬車も傷つけられる前にユカワ様に救っていただけましたから。」
「なんなの。ホント、私今何を目にしているの?もう頭の整理がついていかないわ。」
脳内大混乱の幼いお姫様とその執事兼護衛の初老の紳士とともに俺は改めてラガドの街に向かって出発したのだった。
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