畜魔スライム
今日は久々にスライムの話をしよう。
少し前から開発を進めていたスライムがいる。
畜魔スライムである。
電池は電力をためる道具であったが、この畜魔スライムは特定の魔力源から魔力を吸収して体内に蓄積できるスライムである。
さらに蓄積した魔力を放出するポータブル魔力供給源ともなる。
なぜこのようなスライムを開発することになったかというと、この世界の環境中には魔力が極度に濃くたまりすぎ、災害をもたらすような魔物を発生させるエリアがある一方で、魔力を用いた活動をするのに十分な魔力を回収できないエリアも他方で存在する。
そこで、このスライムが活躍する。
ドロシュ周辺地域には、特にミストラル山脈周辺に多いのだが、魔力だまりと呼ばれる場所がある。
こうしたスポットにこの畜魔スライムを派遣して、魔力を吸収させる。
そして、ドロシュでその魔力を放出させる。
ちなみに、具体的なこの畜魔スライムの利用法については次回説明する。
今回はこの畜魔スライムの仕組みについて見ていこう。
普通のスライムはそれぞれ固有の魔法をその核に生来刻んで生まれてくる。
この刻印された魔法が何らかの環境要因などによって変質したものが突然変異体である。
こうした突然変異体はこれまでも研究室で作成してきた。
今開発中のこの畜魔スライムは生来刻まれていた刻印を解除し、外部から吸収した魔力を核の内部で循環できるような特殊な刻印を再刻印することで生み出される。
スライムの核は通常非常に脆弱だが、スライム同士を融合させ、ヒュージスライムに成長させることで、核の蓄積魔力容量は飛躍的に上昇する。
この発見を契機として、スライムは巨大化させればさせるほど多くの魔力を蓄積できることが判明した。
魔力暴走のような事態が起きないようにするための刻印の工夫は現在も日々改善中である。
ドロシュのような都市は本来自然界ではあり得ないような集中的なエネルギー消費を行う。
こうしたエネルギーの集中的な消費は周辺環境にも負荷をかけうる。
この畜魔スライムを上手に使うことで、ドロシュへの周辺地域のいわば余剰魔力を移送し、エコフレンドリーな都市を発展させることが目標なのである。
こんなに天気がおかしなことになってるのに政府や企業は真面目に気候変動対策に取り組んでほしいですよね。